KDDIグループ、2040年にネットゼロへ: 目標を新設した理由

記事のポイント


  1. KDDIは2040年度を目標達成年とする「ネットゼロ」目標を新設した
  2. 政府目標は2050年に「実質ゼロ」だが、10年前倒しで実現を目指す
  3. 意欲的な脱炭素目標を設定し、国際社会からの要請に応える狙いだ

KDDIはこのほど、2040年度までにサプライチェーン全体でCO2排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」目標を新設した。政府目標は2050年に「実質ゼロ」だが、10年前倒しで実現を目指す。パリ協定で掲げた「1.5℃」目標を達成するには、脱炭素化に向けた取り組みの強化が必須だ。意欲的な脱炭素目標を設定し、国際社会からの要請に応える。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

2040年度までにグループ全体でネットゼロを目指す

KDDIは5月9日、2040年度を目標達成年とするネットゼロ目標を含む4つの脱炭素目標を公表した。同社が消費する電力のうち、2030年度までに追加性のある再生可能エネルギーの比率を50%以上にする目標やデータセンターの使用電力を100%再エネに切り替える目標などだ。

同社は2022年4月に2050年までのカーボンニュートラルなど脱炭素目標を策定していた。目標の見直しは2年ぶりだ。なぜこのタイミングで脱炭素目標を見直したのか。

同社の矢野絹子・コーポレート統括本部サステナビリティ経営推進本部本部長は、「国際社会からの要請を踏まえ、脱炭素化の取り組みをいっそう加速すべく、目標の前倒し・新設を行った」と話す。

目標を見直す大きな経緯は、2023年末のCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)で行った「グローバル・ストックテイク」だ。グローバル・ストックテイクとは、各国が掲げた脱炭素目標に対して進捗を評価する取り組みだ。

COP28では、各国が提出した2030年までの目標に対する進捗を確認した。その結果、各国が提出した目標を達成できたとしても、パリ協定が掲げる「1.5℃」目標は達成しないと結論付けた。

矢野本部長は、「2035年に向けてさらなる目標の引き上げが必要だという認識が世界的に生まれ、環境意識が高まっている」と指摘した。

同社は中期経営戦略の重要課題(マテリアリティ)の一つに「カーボンニュートラルの実現」を掲げており、カーボンニュートラル目標の策定から2年経ったこの時期に、目標の見直しを行った。

スコープ3対策、まずは「可視化」から

排出量の大部分を占めるスコープ3の削減施策はまだ模索中だ。同社ではまずは、排出量の可視化を進める。

スコープ3の15カテゴリーのうち、ホットスポットは、「上流」だ。スコープ3の約95%が、取引先が通信機器を製造する過程に発生するCO2排出量だ。

矢野本部長は、「まずCO2排出量の見える化や削減に向けた取り組みを依頼する必要がある」とし、ガイドブックなどで削減ノウハウを共有する。同社だけでなく通信業界全体で取り組んでいくことや、「KDDI Green Digital Solution」などのソリューション・サービスの紹介も検討しているという。

「KDDI Green Digital Solution」は、CO2排出量の可視化や情報開示、排出量削減に関する戦略の策定支援などを行うサービスだ。同社が、アスエネ、KPMGコンサルティング、グロービングと業務提携し、2023年9月に立ち上げたものだ。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #脱炭素

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