記事のポイント
- ESG情報開示研究会では統合報告書の「自社らしさ」について議論しました
- 国内外の6つの企業の統合報告書を分析し、読みたくなるポイントを分析
- 欧州や米国の企業に共通していたのは、「マガジンライク」という傾向です
ESG情報開示研究会ではこのほど、会員企業の担当者と統合報告書の「独自性」の示し方について議論しました。事例として、日本企業3社、欧州と米国の企業3社を対象に、読みたくなるポイントについて比較分析しました。(一般社団法人ESG情報開示研究会 共同代表理事=増田 典生)
なお、日本企業は、双日、伊藤忠商事、日清食品HDを、欧州と米国からは、フィリップス(オランダ)、ボルボ(スウェーデン)、バンクオブアメリカ(米国)を事例企業としました。
例えば、フィリップスは各章の要約を箇条書きで1ページに集約し、必要情報を簡潔にまとめ、写真なし、色系も3つ程度に限定したシンプルなデザインに仕上げていました。ボルボは、「変革」をテーマに一貫性のあるストーリー構成で、雑誌のような洗練されたデザインが特徴でした。
バンクオブアメリカも、ESG関連情報を2ページに集約し、経済情報誌のようなビジュアルでした。「マガジンライク」な傾向が見られました。
分析した結果、価値創造ストーリーにおいて独自性を強調する要素としては、2つあることが分かりました。一つは、企業のミッション、ビジョン、パーパスに貫通する「価値」を明確に定義づけして説明することです。
二つ目は、価値創造プロセスに関与するステークホルダーを意識してストーリーを組み立てることでした。
トップメッセージについては、報告書のメインテーマとの一貫性が保たれていること、キーワードの繰り返し使用も強力な印象付けに効果的でした。社外取締役のメッセージは戦略の実効性の担保につながります。
自社ブランドや企業風土、文化における独自性を示すにはデザインも重要です。シンプルな記載と雑誌のような洗練されたデザインにすることでメッセージはより伝わりやすくなります。特に欧州や米国企業の報告書にはその傾向が強く見られました。