記事のポイント
- 無印良品グループではインフラゼロハウス展開へ向け試泊を始めた
- インフラだけでなくカーボンや生活コストなどの4つのゼロを目指す
- 住宅のライフサイクルカーボンマイナス化への知見の蓄積にも
無印良品グループのMUJI HOUSEは5月から「インフラゼロハウス」の試泊を始めた。2023年3月から開始した「ゼロ・プロジェクト」のプロトタイプで、インフラ、カーボン、リビングコスト、災害リスクの4つのゼロを目指す。インフラゼロハウスは25年の実用化を目指すが、狙うのはここで得られた知見を住宅のライフサイクルカーボンマイナス化に活用していくことだ。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)
「インフラゼロハウス」は、インフラやカーボン、リビングコスト、災害リスクの4つのゼロを目指す。「ユーティリティ棟」と「リビング棟」の2つのユニットを組み合わせ、車で運べるモバイルハウスになっている。
ユーティリティ棟には蓄電池や水循環システム、キッチン、シャワーなどを設ける。南側壁面には、壁と屋根が一体となった太陽光パネルを設置。2人暮らしの場合には、最大で約3日分の電力を蓄電することが可能だ。
水循環システムでは生活雑排水を浄化・循環利用するシステムを採用。2人暮らしで1日あたりに必要な水量約200ℓのタンクを備える。使用した排水は浄化され再利用が可能だ。
リビング棟には12.15㎡のリビングスペースを設けた。高性能な断熱材を設置して快適な温度に保つ。トイレは水を使わずに微生物によって処理するバイオトイレを採用。電気制御によって分解性能と消臭性を高め、排泄物や生ごみ、トレイットペーパーを分解する。
■試泊で課題や要望を洗い出し25年に実用化へ
ゼロインフラハウス開発のスタートは、昨年3月に立ち上げた「ゼロ・プロジェクト」だった。このプロジェクトでは、「インフラゼロでも暮らせる家」の実用化だけでなく、蓄積した知見を生かして住宅のLCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)化を進めていくことを目指す。
同社では11年に室温維持に必要なエネルギー量を計算して、電力消費量や節約効果を見える化した温熱シミュレーションの全棟実施や、環境に配慮した高性能な住宅の実現へダブル断熱とトリプルガラスサッシの標準仕様化を行ってきた。インフラゼロハウスは、それらに続く施策となる。
5月から試泊も開始した。千葉県房総市の廃校を活用した複合施設「シラハマ校舎」にインフラゼロハウスを設置し、1~3泊の試泊を体験できる。第一タームは今月27日までで、その後、第二ターム(7月12日~8月5日の週末)、第三ターム(9月13日~9月30日の週末)と設ける。いずれも事前の申し込みが必要だ。
これらの試泊を通じて、住み心地や仕様・設備に関する課題や要望を洗い出し、25年の実用化に向けて改善する。
プロトタイプの開発には同社のほかに、オフグリッドインフラハウスで実績のあるINNFRA(山梨県甲府市)や、屋根一体型太陽光パネルを開発するモノクローム(東京・中央)が参画した。