齋藤さんには、ラーメン店で修業をした経験はない。それでも、「私の子どもに食べさせたいラーメンをお客様にも賞味していただきたい」と、食材はなるべく近くで生産されたものだけを使うことにした。
麺作りで使う小麦粉は、岩手県盛岡周辺で栽培されている「南部地粉」。練り混ぜるカンスイは、青森県の陸奥湾ホタテ貝の貝殻を焼成したカルシウム粉末を使用。スープは八戸産煮干しで作り、チャーシューの代わりに三沢市で販売されているパイカ肉(胸の軟骨部分の肉)を採用した。
青森県産のゴボウを使ったノンカフェインのコーヒーも提供し、「お通じが良くなった」と評判だ。
店舗は、古い住宅を改装。電気、水道工事と内装下地材までを業者に頼み、残りの内装は息子と一緒に作り始めた。資金が足りなかったこともあるが、「息子にモノづくりの適性があれば、どこかで心の琴線に触れるかも」という思いもあった。
夏から作業を始めたが、木工の経験も知識もなかったため、ネットで一から調べ、ゆっくりと進めていった。シックハウスの元になる素材は可能な限り排除し、取り外した木材などを再利用。床の塗装には柿渋と荏油を使用するなど、「できる限り人の手で作った物だけで作り上げたい」との思いが込められている。
来店したブロガーからはこんな意見も寄せられた。
「シンプルな醤油ベースで、すっきりとした味。こ、こりゃ美味い。どことなく津軽ラーメンを思わせる味。背脂ギトギトのラーメンと違って、オジさんの体には優しい」
聖子さんは、「今後は、私たちと同じように悩んでいる親子たちにこの店を開放し、NPOを立ち上げて就労支援の機会を増やしていきたい」と意気込む。