記事のポイント
- NECは気候変動などの環境課題に対応するため、社内SNSを立ち上げた
- グループ会社含めて1800人が参加しており、脱炭素施策を話し合う
- 社内浸透に悩むサステナ担当者にとって、参考になる事例だ
NECは気候変動や生物多様性など環境課題に対応するため、社内SNSを立ち上げた。すでに1800人が参加しており、脱炭素施策について意見を出し合う。社内浸透に悩むサステナ担当者にとって、ヒントになる事例だ。(オルタナ副編集長=池田 真隆)
NECが環境課題で意見を出し合う社内SNSを立ち上げたのは、2021年だ。国内のNECグループ社員であれば誰でも参加できるようにしたところ、参加者数は3年で1800人を超えた。
参加者の所属部署も多様だ。事業開発部や経営企画、マーケティング、広報部など幅広い部署から集まる。本社だけでなく、グループ会社の社員も多い。
SNSでは、温室効果ガス排出量の削減施策、カーボンクレジットの扱い方、カーボンプライシングの行方など、関心のある社員が日々、情報交換を行う。
SNSが盛り上がるように、事務局も工夫する。そのポイントは「心理的安全性の確保」だ。
同社環境経営統括部の岡野豊氏は、「新しく参加した方が自己紹介した際には事務局が必ずコメントを返すようにしています。批判的な発言は控えるようにお願いし、安心して参加できるコミュニティーの形成に努めています」と話した。プレスリリースなどを配信した際には共有し、「皆で喜び合う場」としているという。
SNSへの参加者が増えた要因にはこの運営方針もあるが、同社の事業内容も関係する。同社は製造や物流、金融事業者などへのサービスに加えて、自治体向けの公共事業も行う。これらの事業者にとっては、脱炭素は重要課題だ。そのため、顧客のニーズを把握するため社内SNSに入る担当者は少なくない。
■「レポート作成にもSNSが役立った」
サステナビリティ関連のレポートを作成する際にも、このSNSでできたコミュニティーが役立っている。同社は昨年7月、国内IT企業としては初となる「TNFDレポート」を発行した。
同レポートでは、事業と自然資本との関連性をまとめた。一般的に、TNFDレポートの作成には、半年以上費やす企業が多いが、同社はわずか3カ月で制作した。
短期間で作成できた理由は、このSNSだ。制作を担当したのは数人だが、SNSで有志メンバーを募ると、約80人が集まった。こうして、効率よく社内の情報収集を行うことができた。
今年6月には、第2版のTNFDレポートを発行したが、30部署から85人が作成に協力すると名乗り出た。その結果、データセンター事業やヘルスケア、インフラ保守など150種類に及ぶ事業活動のリスクを分析できた。