記事のポイント
- 毎年7月4日には、米国全土で独立記念日を祝う花火が打ち上がる
- 過去20年間、米西部では7月4日に通常の2倍の山火事が発生していた
- 気候変動により植生の乾燥が悪化し、山火事リスクが高まっている
毎年7月4日は、米国全土で独立記念日を祝う花火が打ち上がる。しかし、過去20年の山火事データの解析では、特に米国西部での山火事の大半が7月4日に発生していたことが明らかになった。熱波や干ばつで、植生がひどく乾燥する米西部は特に山火事が起きやすい状態にあり、警戒が高まっている。花火をやめてドローンで祝う地域もあるようだが、課題も見られる。(オルタナ副編集長・北村佳代子)
「7月4日」は、1776年に米国が英国から独立を宣言した日だ。毎年この日は、独立記念日を祝って、赤、青、金の鮮やかな花火が米国各地の夜空を彩る。
その一方で、7月4日には毎年平均1.8万件を超える火災が、米国で発生しているとガーディアン紙は報じる。原因のほとんどは、花火の誤作動やキャンプファイヤーによるものだという。
■過去20年の山火事データからの警告
昨年、米研究者らは、2000年から2019年までに発生した山火事データを解析した。その結果、7月4日だけ、突出して山火事の発生が多いことが明らかになった。特に、カリフォルニア州などの米西部は、7月4日に通常の2倍近い件数の山火事が発生していた。
研究者の一人、米ボイシ州立大学のモジタバ・サデグ准教授は、「気候変動で干ばつや熱波が深刻化し、信じられないほど植生が乾燥している。特に今年の米西部の気象条件は、落雷、たき火、花火など、何らかのきっかけで、すぐにでも火が燃え広がりかねない状態になっている」と警告する。
暑く乾燥した天候は、植物や土壌から水分を奪い、燃えやすい乾燥した燃料を残す。
■現地で高まる山火事への警戒
消防署や政府関係者も、祝賀行事での安全対策の徹底を強調している。
カリフォルニア州消防局のニック・シュラー副局長は、今週に限らず、今年の夏いっぱいは「非常に多忙になることが予想される」として、ピーク時の人員体制で臨んでいるという。
偶発的な火災を防止しようと、米政府は森林局、土地管理局、国立公園局が管理する公有地での花火の所持・使用を禁止している。違反者には5000ドル(約81万円)の罰金および/または6カ月以下の懲役が科される。
しかしそれ以外の地域では、市や郡によって合法的に花火大会が開催されている。米西部の花火大会の中には、森林や乾燥した植生に近い場所で開催されるものもある。
■花火の代わりにドローンで演出も
米国の一部地域では、祝賀行事の花火を部分的もしくは全面的に廃止し、代わりに何百機ものドローンを空に飛ばして、揺らめく星条旗を作り出すなどの演出を試みるところもある。
昨年は、ニューヨーク市郊外のニュージャージー州の上空で、ドローンが巨大な自由の女神を描いた。今年は、カリフォルニア州、コロラド州、オレゴン州の各都市で、花火に代わって、ドローンによる演出が行われる予定だという。
ドローンの演出が、山火事につながるリスクはほとんどない。しかし、光害や鳥との衝突などの欠点もある。NBCニュースは、過去にドローンを試した一部地域が、さまざまな理由から、花火に戻しつつあることを報じた。
■気候変動で山火事発生リスクが高まる
2023年には、カナダで過去最大級の山火事が発生したほか、ギリシャやロシア、ハワイでも、過去最大規模の被害が出た。
カナダ森林火災センターによると、昨年のカナダの山火事で焼失した面積は18万平方キロメートル以上に及ぶという。日本の国土面積(約37.8万平方キロメートル)のほぼ半分に相当する。
湿潤な気候の日本では、山火事が自然発生するリスクは比較的低い。
しかし世界では、気候変動に伴い山火事リスクが増大しており、最近3年間(2020~2022年の年間平均)での焼失面積が、約20年前(2001年~2003年)に比べて2倍近くにまで拡大していると、米シンクタンクの世界資源研究所は指摘する。