「SHEIN」がグリーンウォッシュの疑い イタリア当局が調査へ

記事のポイント


  1. 伊当局は、「SHEIN」の環境主張が誤解を招く可能性があるとして調査を開始した
  2. 同社はウェブサイト上で環境への配慮を主張するが、GHG排出量は大幅に増え続ける
  3. 欧州では今年2月、「グリーンウォッシュ禁止令」が採択されている

イタリア競争当局は、ファストファッション「SHEIN」にグリーンウォッシュの疑いがあるとして調査を開始した。問題視したのは、「SHEIN」がウェブサイト上で展開する複数の環境主張だ。EUでは2024年2月に、根拠のない環境主張(グリーンウォッシュ)を禁止する「グリーン・クレーム指令」を採択し、監視を強化している。(オルタナ副編集長=北村佳代子)

「SHEIN」の環境主張にグリーンウォッシュの嫌疑

「SHEIN」は今や、150か国以上にアパレル製品等を販売・配送する世界最大級のオンライン・ファッション企業だ。

中国・山東省出身の許仰天(シュー・ヤンティエン、英名クリス・シュー)氏が、2008年に中国でウェディングドレスのオンライン販売会社を創業したのが始まりだ。過去10年間で急成長を遂げ、今、本社はシンガポールにある。

同社の2023年の利益は、前年から倍増の20億ドル(約288億円)と、スウェーデンの大手ファッション企業H&Mの利益を上回る。SHEINは、ロンドン証券取引所への上場に向けて準備を進めている。

■根拠のない環境主張に監視の目

SHEINは、ホームページの「#SHEINTHEKNOW(『SHEINについて知っておくべき事実』)」や「evoluSHEIN」、「社会的責任」などのページで、「資源循環」などのサステナビリティに関する取り組みを紹介する。

しかし、イタリア規制当局は、これらを裏付ける情報が欠けていることなどから、消費者を欺く可能性があるとして、調査を開始した。

また、同社があいまいで一般的な表現を用いて、製品やビジネスがサステナブルとの印象を与えようとしており、その点も、消費者に混乱や誤解を招きかねないと問題視した。

■SHEINのGHG排出量は増え続けている

SHEINは自社の気候目標として、2030年までにサプライチェーン全体(スコープ3)での温室効果ガス(GHG)排出量を25%削減することを掲げる。同社の「サステナビリティ/ソーシャルインパクトレポート」では、環境や人権課題に対する同社の取り組みを紹介する。

しかし、2023年のレポートからは、同社のGHG排出量が1年で大幅に増加したことがわかる。2023年のスコープ3のGHG排出量は、「輸送・配送」が前年比で約2倍、「出張」は同約5倍、「製品の廃棄」に至っては同20倍に膨れた。

自社の努力で排出量の削減がしやすいとされる「スコープ1」「スコープ2」の排出量も、2023年はそれぞれ前年の約2倍、約1.3倍に増えた。

イタリア規制当局は、過去数年分の同社レポートを見ても、GHG排出量の増加傾向に改善が見られないことも指摘した。

■規制当局はファッション業界に目を向ける

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北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

オルタナ副編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部。

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キーワード: #サステナビリティ

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