記事のポイント
- シーフードレガシーなどは、「東京サステナブルシーフード・サミット」を開催した
- 10月8日からの3日間、持続可能な水産物の調達をめざし、国内外の専門家が議論した
- 同会議は今年で10回目。初日の8日は、10年の振り返りやIUU漁業などを取り上げた
シーフードレガシーなど4組織は10月8日から、持続可能な水産物の調達をめざす「東京サステナブルシーフード・サミット」(TSSS)を開催した。企業や水産庁、海外NGOなどから専門家を招き、水産業をとりまく課題について議論した。最大の課題は、IUU(違法・無報告・無規制)漁業による生態系の破壊や漁業労働者の人権侵害をいかに防ぐかだ。(オルタナ編集部=松田 大輔)
水産業をめぐっては、IUU漁業による生態系の破壊や労働者の人権侵害など、問題が山積している。
TSSSの開会挨拶では、シーフードレガシーの花岡和佳男代表取締役社長と、日経BPの浅見直樹専務取締役が、水産業をとりまく10年間の動きを振り返った。
過去10年、水産会社などはIUU漁業の疑いがある水産物を調達しないようにする方針を相次いで公表した。水産大手のニッスイやマルハニチロ、ニチレイをはじめ、小売りではイオンやセブン&アイ・ホールディングス、日本生協連などが、持続可能な水産物の調達方針を掲げる。
一定の成果がある一方で、ウォルトンファミリー財団 環境部門のテレサ・イッシュ・シニア・プログラム・オフィサーは「乱獲量は過去50年で約3倍に増えた。課題の解決には、漁業を適切に管理することが欠かせない」と指摘した。
乱獲などのIUU漁業を防ぐためには、トレーサビリティ(追跡可能性)の確保が課題となる。
WWFジャパンの植松周平IUU漁業対策マネジャーは、「日本の輸入水産物の24-36%がIUU漁業と推定されている。奴隷労働の問題にもつながっており、トレーサビリティの確保が重要だ」と語る。
「日本の水産業を活性化させるという意味でも、今すぐに取り組まなければいけない問題だ。トレーサビリティを確保できなければ、規制が厳しくなる米国や欧州に向けて、将来的に日本の水産物を輸出することができなくなってしまう」
2日目の10月9日には、アジア圏の動きや日本の水産業の未来、IUU漁業と労働者の人権侵害などについて議論した。
3日目の10月10日には、金融業界の動きや環境・人権デューデリジェンス体制の構築などを取り上げた。