記事のポイント
- Iデータセンターの余熱を地域住民の暖房に活用する動きが増えてきた
- データセンターのエネルギー消費量は航空業界と同等で、今後も増える
- 管理コストと環境への影響をどう抑えるかが課題だ
グーグルやマイクロソフト、アマゾン・ドットコムなど巨大IT企業が欧州に持つ主要データセンターの余熱を企業や家庭が使う暖房に活用する動きが増えてきた。データセンターのエネルギー消費量は世界のエネルギー消費量全体の2%以上を占め、航空業界と同等だ。データセンターのエネルギー消費量は今後も爆発的に増えると見込まれており、管理コストと環境への影響をどう抑えるかが課題だ。(オルタナ副編集長=池田 真隆)
国際エネルギー機関(IEA)は、2024年から2026年のエネルギー予測をまとめた「Electricity 2024」を公表した。同レポートでは、世界全体のデータセンターのエネルギー消費量は2026年には2022年の2倍以上に増えると予測した。この消費量は日本全体の消費量に相当する。
データセンターの持続可能な稼働には、エネルギーの安定的な調達が欠かせない。だが、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルによるガザ地区への攻撃など地政学的リスクは高い。
フィンランドやデンマーク、ノルウェーなどにデータセンターを置き、再生可能エネルギーを電源として使う企業は多い。
■「カーボンフリー」な暖房を供給へ
一方、大量の熱量を発生するデータセンターの特徴を生かして、地域の暖房インフラに活用する動きが増えている。
グーグルは5月、フィンランドのハミナ市に設置したデータセンターの余熱を地域の暖房インフラに供給する取り組みを始めた。この取り組みでは、地域の暖房需要の80%を賄うことを目指す。
同市に置いたデータセンターは実質温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーなどで運営している。そのため、回収する熱エネルギーも「カーボンフリー」になるという。
データセンターの余熱を、地域の家庭や学校、公共施設に供給し、各施設で暖房として使う。
マイクロソフトやアマゾン・ドットコム、アップルなども同様の取り組みを行うことを公表している。
■パリ五輪会場も、データセンターの余熱を生かす
データセンター保守サービス大手のエクイニクス(米カリフォルニア州)も、データセンターの余熱を地域に提供する「Heat Export プログラム」を推進する。
近隣の建物やプールにカーボンフリーなエネルギーを供給する。フランス、フィンランド、ドイツ、アイルランド、スイス、カナダなどで実施中だ。
パリで7月に開催する2024年夏季オリンピックの会場の一つである競泳センターにも、パリに設置したデータセンターの余熱を供給する予定だ。