アフリカBOPビジネスを考える【CSRフロンティア】

アフリカでビジネスを成功させるには、熱い思いのほか、こうしたローカル化が欠かせない。蓄電器を非電化地域でリサイクルしてレンタル、販売するというのも日本にはないビジネス・モデルである。さらに坂田さんの挑戦は、BOPビジネス展開のために、いくつかの重要な点を示唆してくれている。

1.ジョモ・ケニヤッタ大学は1980 年代にJICAがODA資金で作った大学で、学生は日本語もできる。中国、韓国企業も同大学にアプローチしているが、日本ほど食い込めないでいる。つまり、長期的な視野に立ったODA支援が重要であることがわかる。

2.坂田さんの教え子が経営者になっており、この信頼に基づいたネットワークに、社会起業家や、世界の貧困問題に取り組んでいるグローバル・ベンチャー・ファンドのアキュメンファンドなど新しい連携を加え、ネットワークは一層強化されている。

3.2011年12月、ケニア大統領選で選挙啓蒙に挑戦。キャラバンン・トラック2台にソーラー張り、全国200 ヵ所を回る計画だったが、「テロに狙われたらまずい」で中止に。がっかりしたが、いいアイデアが浮かんだ。蓄電したバッテリーを非電化村へレンタル配達したらどうかと。ビジネス成功には不屈の精神とアイデアが必要だ。

BOPビジネスが必ずしも途上国限定とは限らない。そういう意味で、興味深いのは、ゼロユニット・プロジェクトだ。水、トイレ、ソーラーを一つのユニットにまとめ、環境負荷ゼロにしようという仕組みである。水は雨水をろ過、電気はソーラーから。バイオ・トイレにして便は生ごみとコンポスト経由で肥料に。これをひとつのユニットにしようというアイデアだ。アフリカ発が先進国へ逆輸入という時代が来るかもしれない。

【はらだ・かつひろ】日本経済新聞社ではサンパウロ、ニューヨーク両特派員。国連、NGO、NPO、社会起業家のほか、CSR、BOP ビジネスなどを担当。日本新聞協会賞受賞。2010 年明治学院大学教授に就任。オルタナ・CSR マンスリー編集長。著書は『CSR優良企業への挑戦』『ボーダレス化するCSR』など。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第7号(2013年4月5日発行)」から転載しました)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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