若者有志16人がCO2排出の削減を求めて、電力10 社を提訴

記事のポイント


  1. 15―29歳の若者16人が、電力会社 10 社を相手に「気候訴訟」を起こした
  2. 気候変動対策を怠ることは、人権を侵害する行為だと訴える
  3. 「1.5℃目標」を実現するために、CO2排出量の削減を求めた

15―29歳の若者16人が8月6日、CO2排出量の削減を求め、JERAなど主要電力会社 10 社を相手取り、名古屋地方裁判所に提起した。この10社のCO2排出量は、日本全体の約3割を占める。原告と弁護団は、気候変動対策を怠ることは、人権を侵害する行為だと訴えた。(オルタナ副編集長=吉田広子)

35度近くの暑さの中、原告の若者16人は、横断幕を持って支援者の拍手を浴びなら名古屋地裁に入っていった(撮影・関口威人)
35度近くの暑さの中、原告の若者16人は、横断幕を持って支援者の拍手を浴びながら名古屋地裁に入っていった(撮影・関口威人)

原告らが提訴したのは、火力発電事業を展開するJERA、Jパワー(電源開発)、神戸製鋼所、北海道、東北、北陸、関西、中国、四国、九州の各電力会社の計10社だ。

電力事業は、日本のエネルギー起源CO2の約4割を占める最大の排出部門だ。

10社のCO2排出量(2019年度)は計3億3740万トンに上り、日本のエネルギー起源CO2排出量(10億2900万トン)の33%を占める。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、「1.5℃目標」を実現するには、CO2排出を2019年比で 2030年までに48%、2035年までに65%削減するように求める。

しかし、日本の主要電力会社の目標は、この水準を下回る。さらに、石炭火力発電所でのアンモニア混焼や、ガス火力発電での水素混焼を国内外で推進し、化石燃料による発電の延命措置だと批判されている。

宮澤カトリンさん(写真中央)ら原告は、気候変動の影響で生活が脅かされる危機感を訴えた(撮影・関口威人)
宮澤カトリンさん(写真中央)ら原告は、気候変動の影響で生活が脅かされる危機感を訴えた(撮影・関口威人)

原告らは、気候変動対策を取らないことは、人権や利益の侵害に当たるとして、提訴した。被告に対し、火力発電に由来するCO2排出量を2019年比で2030年までに52%、2035年に35%を超えて排出してはならないことを求める。

原告らは「気候変動は、将来世代の人権侵害だ」「暑すぎることで、外で遊ぶことや運動会が制限されてきた」と訴えた。

こうした気候訴訟は、世界各地で起きている。欧州人権裁判所は2024年4月、「スイス政府の不十分な気候変動対策によって、健康や生活に被害が出ている」ことを認めた。ドイツ連邦憲法裁判所は、2021年4月、気候変動対策が不十分で、将来世代の権利を侵害しているとして、当時の気候保護法が一部違憲だと判断した。

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

執筆記事一覧
キーワード: #脱炭素

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..