原田 勝広(明治学院大学教授)
大学はいま夏休みである。ボランティアが盛んな大学として知られる明治学院大学には古くからボランティアセンターがある。センター長を務めることになった私は、「ボランティア」の概念を広くとらえるよう学生を指導している。公園の掃除や高齢者施設の訪問だけでなく、組織化されたNPOやNGO、さらには社会起業家も、社会的課題解決に挑んでいる「ボランタリーな活動」であり、ボランティア精神とソーシャル・アントレプレナーシップはつながっている。「社会のために」という考え方は、国連や赤十字で働くことや、企業のCSRにもかかわってくる。つまり、ボランティアというのは、ひとつの生き方である。そんな風に教えている。
ボランティアセンターに所属する学生メンバーは意識も高く、今年はカンボジアへの社会起業家研究ツアーを企画している。当初はバングラデシュに行く予定だった。何といってもあのムハマド・ユヌスさんの国だし、グラミンバンクも見てみたい。ダノンとの合弁、グラミン・ダノンや日本から進出しているユニクロや雪国まいたけの奮闘ぶりにも興味があった。マザーハウスの山口絵理子さんにも会いたい。そんな期待は、縫製工場が入居しているビルの崩壊事故で一気に吹っ飛んでしまった。あの事故以降、国内の治安が極端に悪化しているというのだ。
元気印の3人娘からおじさんまで
代替案として浮かんだのがカンボジアだった。当初は、長い内戦と大虐殺のイメージしかなく、もうひとつ気乗りしなかったが、村田早耶香さんのNPO法人かものはしプロジェクトが、コミュニティ・ファクトリを作って貧困女性を支援していることを思い出した。さらに調べてみて驚いた。たくさんの日本人社会起業家が現地でソーシャルビジネスを展開していたのだ。