ネスレ日本など39組織、伝統工芸をアップサイクル素材で

記事のポイント


  1. ネスレ日本など39組織が連携し、アップサイクル素材で伝統工芸品を開発する
  2. これまでに伝統技術で手ぬぐいやアクセサリー、トートバックなどを作った
  3. お菓子などの紙パッケージや未利用の間伐材を「紙糸」にして製品化した

ネスレ日本や日本ロレアルなど39組織が連携して、アップサイクル素材で伝統工芸品を作っている。お菓子などの紙パッケージや未利用の間伐材を紙糸にして、伝統技術で手ぬぐいやアクセサリー、トートバックなどを開発した。Z世代など若者に人気がじわり広がる。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

加賀友禅の技法でつくった「手ぬぐい」、京都精華大学の学生がデザインした

アップサイクル素材で伝統工芸品を作っているのは、一般社団法人アップサイクル(大阪市)だ。循環型社会への移行をミッションに掲げた団体で、ネスレ日本や日本ロレアル、サラヤ、神戸市など39組織が参画する。2023年2月にできた。

日本には1056の焼却施設があるが、ごみの総処理量の80%以上が「焼却処理」だ。焼却による温室効果ガス(GHG)排出量の課題もある。

家庭から出る紙のリサイクル率については、約2.7%(容器包装リサイクル協会調べ)と少ない。そこで、一般社団法人アップサイクルは、紙の再資源化に取り組む。

これが同団体の主力プロジェクトである、「アップサイクル紙糸」だ。使い終えたお菓子などの紙製パッケージや未利用の間伐材を紙糸にアップサイクルする取り組みだ。地球や社会、地域コミュニティーを「紡ぐ」象徴として、プロジェクトの名称を「TSUMUGI」と名付けた。

アップサイクル水引から「創作アクセサリー」を作った

紙資源の回収から紙糸への再資源化、製品への加工など、一般社団法人アップサイクルに参画する組織が各工程を担う。それぞれの組織が協働して、資源循環の輪をつくる。

これまでに、「加賀友禅」の技法で手ぬぐいを、「東京水引」とコラボレーションして、創作アクセサリーなどを開発した。これらのプロジェクトでは、作り手はプロのアーティストだけでなく伝統技術を職人から教わった美大生が務める場合もある。学生に技術を教えることで、「伝統」の継承を狙った。

回収する紙パッケージは、参画組織であるネスレ日本が提供する「ネスカフェ」や「キットカット」だ。西日本の大手スーパーを中心に回収ボックスを置いた。2021年から回収を始め、回収拠点は3年で20倍に増えた。今後は、回収拠点を全国各地に広げていく。

回収に協力した生活者にインセンティブがある訳ではないが、1店舗当たりの回収量は年々増えている。

一般社団法人アップサイクルの瀧井和篤・事務局長は、「使い終えた紙パッケージを捨てるのではなく、再資源化に協力する人が増えてきた実感がある。取り組みを続けることで一定の層には習慣化できてきた」と手応えを話した。

日本の伝統技術、フランス・パリでも輝く

TSUMUGIによってできた伝統工芸品は公式サイトや百貨店のポップアップで販売する。特に人気なのは、加賀友禅手ぬぐいや会津型トートバックだ。

今年7月には、フランス・パリの催事にも出展した。漫画やアニメなども含めた日本文化を発信する「ジャパンエキスポ・パリ」だ。欧州最大規模の同催事の「伝統工芸」ブースに出展した。

TSUMUGIでできた、伝統工芸品の販売と染色のワークショップを行った。福島県喜多方市の伝統工芸「会津型」でつくったトートバックとポーチが好評だった。

日本から持ってきたトートバックとポーチは完売した
紙製パッケージのアップサイクルに興味を持つフランスの若者も多かった

現地のブースで接客した瀧井・事務局長は、「日本の伝統工芸への興味・関心が高く、製品に対する評価が非常に良かった。製品を購入するだけでなく、オリジナル製品を作りたいという思いを持つ若者が多かった」と振り返った。

9月からはTSUMUGIの常設店を東京駅直結の大丸東京店内(「明日見世(あすみせ)」(同店9階)に開く。明日見世は「D2C(ダイレクト・トゥ・カスタマー)」をテーマにした展示スペースで、200以上のブランドが出展する。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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