◆先進国が気候変動対策をリード
――沈みかねないツバルには移住計画がある。ミクロネシア連邦政府に対策は。
連邦政府にもポンペイ州政府にも気候変動に関する部署はあるが、具体的に対策計画を立てているようには見えない。2013年11月のポーランドでのCOP19には、ポンペイ州環境保護局の担当者が国代表として出席したが、私の知る限り、持ち帰った情報が政府、州政府レベルで積極的に共有、活用されている様子はない。
積極的なのは現地政府よりも先進諸国の援助機関。「地球の日」「世界環境の日」などの大きな啓発イベントもオーストラリアの援助団体や大使館主導で行われている。日本は私も所属するJICAが代表だ。
気候変動問題には適応策と緩和策の双方が重要だが、この国は人口も少なく実質的に排出する温室効果ガスも世界規模で見ればゼロにも等しい。そのため、圧倒的に適応策がポイントとなる。
今は、ポンペイ島は環礁に守られているが、海水温の上昇や風の影響で、年1センチメートルという世界平均の3倍以上の海面上昇の可能性が指摘されている。海面が上昇するとアウターリーフの緩衝作用が無くなり、サンゴと絶妙のバランスで共生している沿岸部のマングローブ林が生育できなくなる。そうなると、ポンペイでも被害はあり得る。
先日はEUの補助金プロジェクトで人口約60人、海抜3メートル以下のパキン環礁に出張してきた。「気候変動が進んだ時にどんなことが起こり得るのか」「どんな準備が今から必要なのか」ということを住民主導で議論してきた。今後も、こういった活動を地道に続けていきたい。
【浜川喬弘氏プロフィール】
1983年生まれ。愛媛大学大学院卒。民間企業に4年勤め、退社後JICAの青年海外協力隊として2012年からミクロネシア連邦ポンペイ州環境保護局で働く。同国の現大統領エマニュエル・モリの曽祖父の森小弁と同じ高知県出身。