米国の気候有志連合、「トランプ政権でも決して後戻りしない」

記事のポイント


  1. トランプ氏当選を受け、全米規模の気候有志連合が声明を出した
  2. 「何があろうとも未来のために闘う。後戻りしない」と力強い内容だ
  3. トランプ氏は選挙戦で「パリ協定からの離脱」を公約に掲げていた

マイクロソフトやカリフォルニア州、ニューヨーク市など5000以上の企業・自治体が加盟する全米最大の気候有志連合「アメリカ・イズ・オール・イン」(AIAI)などが11月6日、米大統領選でのトランプ氏当選を受け、「気候変動対応へのコミットメントは揺らがない」と声明を出した。トランプ氏は、自身が再選した場合、パリ協定から再び脱退することを公約に掲げてきた。(オルタナ副編集長=北村 佳代子)

全米の気候変動対策連合は結束を誓う

■COP29でも気候に立ち向かう米国の意思表明へ

AIAI、米クライメート・アライアンス(米国気候同盟)、クライメート・メイヤーズ(環境を考える市長の会)の3団体から成る「気候変動対策連合」は11月6日、米大統領選でのトランプ氏の当選を受けて声明を出した。

その内容は、「気候変動危機に立ち向かい、前進するというコミットメントが揺らぐことはない」との強い決意を表したもので、「何があろうとも我々は、(中略)未来のために闘う。我々は後戻りしない」とした。同連合は、パリ協定で掲げた「1.5℃目標」の達成に向けて、改めてコミットする姿勢を示した。

11月11日からはアゼルバイジャンで国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)が開催される。11月16日からはブラジルで、都市外交イニシアティブ「アーバン20(U20)」も開催予定だ。

3団体の代表団は、「後戻りしない」とのメッセージを携えてこうしたグローバルな舞台に臨み、パリ協定の目標達成に向けて国際社会と協力して前進していくという米国の持続的なコミットメントの姿勢を示した。

2900以上の企業・投資家が声を上げる

アメリカ・イズ・オール・インはパリ協定が求める環境対策を、連邦政府の方針とは別に支持・推進する団体だ。気候危機の緊急性に対応した野心的で包括的な国家気候戦略を策定するよう働きかけてきた。

■マイクロソフトやウォルマートなど大手企業も参加

AIAIは、ブルームバーグ・フィランソロピーが支援し、世界自然保護基金が主導する。マイクロソフト、ウォルマート、スターバックス、ナイキなど2300超の企業(投資団体を含む)のほか、ニューヨークやカリフォルニアなど10州、ハーバード大学やコロンビア大学など425の教育機関が参画している。

2017年6月にトランプ大統領(当時)がパリ協定からの離脱を発表すると、米国内で「ウィー・アー・スティル・イン(私たちはパリ協定にとどまっている)」という民間イニシアティブが生まれた。このイニシアティブが発展したものが、「アメリカ・イズ・オール・イン」だ。
*ウィー・アー・スティル・インに関する記事はこちら

米クライメート・アライアンスはパリ協定への順守をコミットした州の集まりだ。クライメート・メイヤーズはパリ協定で定めた「1.5℃目標」を尊重する市長から成る。3団体合計で、24人の知事、約350人の市長、2900以上の企業・投資家が名を連ねる。

AIAIに加盟する企業や大学、自治体

AIAIに加盟している主な企業や大学、自治体は次の通り。

企業: アマゾン、アップル、スリーエム、アディダス、アドビ、Airbnb、BASF、シティグループ、ダノン北米、デル、ダウ、Dropbox、デュポン、エステーローダ、メタ(旧フェイスブック)、ギャップ、ヒューレットパッカード、IBM、イケア(米)、インテル、ジョンソン&ジョンソン、ケロッグ、ロレアル、リーバイス、LinkedIn、ルルレモン、マース、マクドナルド、マイクロソフト、ネスレ、ネットフリックス、ニューバランス、ナイキ、パタゴニア、ペイパル、ペンギンランダムハウス、ペプシコ、PVH(トミーヒルフィガーとカルバンクラインの親会社)、ラルフローレン、スターバックス、セールスフォース、シュナイダーエレクトリック、シーメンス、スワロフスキー、ターゲット、テスラ、レゴグループ、ザ・ノースフェイス、ティファニー、ティンバーランド、UBERテクノロジー、ユニリーバ、ベライゾン、ウォルマート、Yahoo、リコーUSA、住友化学アメリカ

州: カリフォルニア州、コネティカット州、ハワイ州、ミネソタ州、ニューヨーク州、ノースカロライナ州、オレゴン州、ロードアイランド州、バージニア州、ワシントン州

市:ニューヨーク市、ロサンジェルス市、サンフランシスコ市、サンディエゴ市、ホノルル市、ボストン市、シカゴ市、デンバー市、ナッシュビル市

※トランプの地盤・フロリダ州からはマイアミ市、タンパ市、オーランド市、キーウェスト市、セント・ピーターズバーグ市、フォート・ローダーデール市など。テキサス州からはヒューストン市、ダラス市など

※激戦州からはペンシルベニア州のフィラデルフィア市、ピッツバーグ市、ランカスター市など。アリゾナ州からフェニックス市など。ジョージア州からアトランタ市など。ミシガン州からデトロイト市など。ウィスコンシン州からミルウォーキー市など。ノースカロライナ州からアッシュビル市など。ネバダ州からはリノ市

大学:ハーバード大学、コロンビア大学、デューク大学、ミシガン大学、カリフォルニア大学、ワシントン大学、アマースト大学、マサチューセッツ工科大学、アリゾナ州立大学、ペンシルバニア州立大学、カリフォルニア州立大学など

※プリンストン大学やイエール大学、ブラウン大学、スタンフォード大学などは不参加

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

オルタナ副編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部。

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キーワード: #脱炭素

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