記事のポイント
- 使い捨てカップをリユースにした場合の環境負荷を分析した報告書が公表された
- 国際環境NGOグリーンピース・ジャパンが調査を行った
- リユースに完全移行すると、CO2排出量は57%削減できることが分かった
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京・港)はこのほど、カフェやコンビニエンスストアが使い捨てカップをリユースにすると、環境負荷はどの程度減るのかを分析した報告書を発表した。大手カフェやコンビニで消費される使い捨てカップは、年間約25億個にも上る。報告書によると、リユースに完全移行すると、CO2排出量は57%、水の使用量は36%削減できることが分かった。(オルタナ副編集長=吉田広子)
グリーンピース・ジャパンは、「使い捨てない」社会の実現を目指し、政策提言やキャンペーンを行ってきた。マイボトルはユーザー主導であることと、店内用カップは持ち帰りができないため、リユースカップシステムに着目し、環境負荷を調査した。
リユースカップシステムは、ユーザーは店からリユースカップを借りて、店内外の指定された場所に返却する。使い終わったカップはリユースサービス業者が回収・洗浄し、カップを飲食店に戻す仕組みだ。
グリーンピース・ジャパンは、日本の大手カフェチェーンとしてスターバックスコーヒージャパン、タリーズコーヒー、プロント、大手コンビニチェーンとしてセブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンが提供する使い捨てカップの消費量を明らかにし、リユースカップシステムに移行した場合の環境影響評価(LCA)を調査した。
その結果を報告書『変革を先導するー日本のコンビニエンスストアとカフェチェーンの企業責任およびリユースの解決策』にまとめた。
報告書によると、2023年の使い捨てカップ消費量の推定は、スターバックスが最多の3億4200万個、タリーズが1億1140万個、プロントは2130万個だった。計4億7480万個に上り、2020年の3社の消費量を1億3000万個上回ったという。
大手コンビニチェーンの2023年度の使い捨てカップ消費量の推定は、セブン-イレブンが最多の9億1400万個、ファミリーマートが7億3400万個、ローソンが3億2800万個で、合わせて19億個に上った。
報告書によると、1日のテイクアウト飲料を100%リユースカップで提供した場合、使い捨てカップと比較して、1カップあたりCO2換算排出量は57%、水の使用量は36%、化石燃料の消費量は62%削減される。
仮にリユースの利用率が40%だった場合でも、1カップあたりCO2換算排出量は52%、水の使用量は34%、化石燃料の消費量は56%削減できる。
グリーンピース・ジャパンでプラスチック問題を担当する大館弘昌氏は、「プラ汚染対策に関する国際条約交渉が進むなか、抜本的な対策として企業が使い捨て容器包装に依存するモデルを見直し、可能な限りリユースを導入するなど、脱使い捨てのビジネスモデルへの転換が求められている。困難を伴う変革ではあるが、1社や1つの業界だけでは限界があるからこそ、特に使い捨て容器包装の消費量が多い対象企業6社をはじめとする大手企業が業界を超えて連携することが必要だ」とコメントしている。