3.話はしたが、しっかり聞いたのか:企業の操業によって周辺コミュニティに何らかの影響がもたらされた可能性がある場合、コミュニティからの相談案件について触れているケースもある。しかし、コミュニティとのかかわり方を描写している表現を読めば、企業が実際にはステークホルダー・エンゲージメントをどうとらえているかが分かる。例えば、「コミュニティの誤解で??」とあれば、エンゲージメントは一方的で、問題に対処したり、どのようにしてステークホルダーとのコミュニケーションを改善できるかを検討するよりも、情報を伝達することに重点を置いていることが分かるのだ。
4.批判の声への恐れ:ステークホルダーが懸念していることはレポートに掲載されず無視されることが多い。レポートにはステークホルダーからの友好的な声や企業を賞賛する内容が書かれている。企業が取り組むべき課題についても自ら提起することによって企業の信頼性や信用も増すだろう。
5.変化を示す:ステークホルダー・エンゲージメントを行った後にどうなったのか。意義あるエンゲージメントであれば、ビジネスのやり方やプロセスに何らかの変化がもたらされる。そうでなければエンゲージする意味はないのだ。企業はレポートでステークホルダー・エンゲージメントの結果もたらされた変化をきちんと示すことが重要であり、それができなければ、責任ある企業として最も重要な核のひとつであるエンゲージメントの価値を理解していないことを読者に知らせることになるかもしれない。
高橋佳子(CSR Asia シニア・プロジェクトマネージャー) 監訳
【ガブリエル・チョン】CSR アジア マレーシア事務所のシニア・プロジェクトマネジャー。ステークホルダー・エンゲージメントやサステナビリティ・レポート、セクターベンチマーキング、企業への研修などのCSR分野で幅広い豊富な経験をもつ。
(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第11号(2013年8月5日発行)」から転載しました)
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