記事のポイント
- 若者有志団体は日本政府に対してGHG削減目標案の見直しを訴えた
- オンラインで5万人の署名集め、石破茂首相らに提出する
- 政府が示した目標案については、複数の企業などからも批判の声が相次ぐ
若者有志団体は12月9日、日本政府が示した温室効果ガス(GHG)削減目標案の見直しを求めるためオンラインで署名集めを始めた。政府は11月末、「2035年までにGHG60%削減(2013年比)」という目標案を示した。だが、若者有志団体は、この削減目標案がパリ協定で定めた「1.5℃目標」と整合しないとして、署名を呼び掛けた。年内中に石破茂首相らに提出する。(オルタナ副編集長=池田 真隆)
オンライン署名を呼び掛けているのは、若者の意見を政府に伝える活動を行う一般社団法人日本若者協議会と環境活動を行うFridays For Future(フライデーズ・フォー・フューチャー)の各支部だ。
若者有志団体が見直しを求めるのは、日本政府が11月25日に示した、次期NDC(国別のGHG削減目標)案に対してだ。政府は、2035年度までにGHGの60%減(2013年度比)を目指す目標案を示した。
だが、この削減ペースはパリ協定で定めた「1.5℃目標」と整合していないとして複数の企業や環境NGOなどから批判の声が相次いでいた。
1.5℃目標を実現するため、政府に政策提言などを行う日本気候リーダーズ・パートナーシップ事務局(JCLP)の松尾雄介事務局長も、「不十分だ」と言い切った。JCLPは。リコーや富士通、イオンなど252社が正会員だ。
世界の科学者らから構成する国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2023年3月、第6次統合報告書を公表した。
その報告書では、1.5℃目標を達成するには、GHG排出量を2035年までに2019年比で60%減らす必要があると提示した。この削減ペースで、政府が示した削減目標案(2013年度比60%減)を測ると、「51%減」となり、IPCCが求める60%減に及ばない。
■審議プロセスの「透明性」も求める
若者有志団体は、次期NDC案の削減水準の見直しだけでなく、審議プロセスの透明性にも言及した。政府は11月25日に次期NDC案を環境省と経産省が合同で開いた気候変動に関する審議会で示したが、会合が終わる30分前だった。委員に事前の通達もなかった。
「結論ありき」で進めようとする審議会の進め方についても、見直しを求めた。加えて、審議会の委員の「偏り」についても問題視した。特定の産業に偏った委員構成ではなく、若者などエネルギーの需要家側の委員も増やすべきだとした。
オンライン署名は年内まで、署名サイト「チェンジ・ドット・オルグ」で集める。目標は5万人だ。年内中に石破茂首相、武藤容治経済産業相、浅尾慶一郎環境相に届ける。
呼び掛け団体の一つである、一般社団法人日本若者協議会の室橋祐貴代表理事は、「このままでは、十分に議論することなく政府案が通ってしまう。この削減目標に納得できる人はほとんどいないはずだ。温暖化が加速する中、本当にこの削減ペースでいいのか」と危機感を示した。