記事のポイント
- 脱炭素化の遅延が日本の経済に与える損失を分析した調査が出た
- 分析したのは、70を超える機関が加盟する機関投資家グループだ
- 野心を欠く気候政策では、気候変動被害で日本のGDPは大きく低下すると警告する
脱炭素化の遅延が日本に与える経済的損失を分析した調査が出た。分析したのは、70以上の機関が加盟するアジア投資家気候変動グループ(AIGCC)だ。レポートは、世界各国の現行の排出削減目標に基づく政策が続いた場合、日本のGDPは、気候変動による被害で年間約10%のマイナス影響を受け、日本経済は約952兆円規模の損失を被ると予測する。一方で、「1.5℃目標」に整合した野心的な政策を実現すれば、年間約40兆円規模の損失回避効果が見込めるという。(オルタナ副編集長=北村佳代子)

赤は、野心を欠いた現行のNDCが継続した場合のシナリオ
緑は、「1.5℃目標」に整合した政策が実現した場合のシナリオ
(C) Asia Investor Group on Climate Change (AIGCC)
機関投資家グループのアジア投資家気候変動グループ(AIGCC)は17日、「ネットゼロ(温室効果ガス排出量実質ゼロ)へのトランジション(移行)の遅れが日本にもたらす経済的損失」と題する報告書を公開した。
AIGCCは、11の市場から70以上の機関が加盟する機関投資家グループだ。その運用資産総額は28兆ドル(約4300兆円)を超える。
報告書は、不十分な目標やネットゼロに向けた野心を欠くトランジションでは、日本経済に重大なリスクをもたらすと警鐘を鳴らす。
AIGCCの用いたモデル分析では、今の世界各国の排出削減目標(NDC)に基づく政策が継続すると、気候変動による被害で、日本のGDPは年間約10%のマイナス影響を受け、2050年までの経済損失規模は約952兆円に上るという。
特に日本は、主要貿易相手国上位10カ国のうち7カ国が、世界でも気候リスクの高いアジアに位置しており、日本経済が受ける影響は、米国や欧州を上回ると予測する。
一方で、科学的に「ネットゼロ」シナリオと整合する気候目標を設定すれば、日本は年間数千億円規模の経済的便益を得られ、2050年までに年間約40兆円の損失を回避する効果が見込まれるという。
日本は今まさに、次期NDCや、第7次エネルギー基本計画でのエネルギーミックス目標を策定するさなかにある。AIGCCは、これら政策の策定過程では、気候変動による経済的影響も十分に考慮に入れる必要があると提言した。
AIGCCの報告書(英語)はこちらからご覧いただけます。