いよいよ日本にも「アフリカBOPビジネス」の大波か?

■ 15のビジネスモデル

原田 やり方次第ということですね。ビジネスモデルはどんなものがあるか。

平本 成功事例が数百に達しており、成功要因となるビジネスモデルは、1)バリューチェーンの構築・強化型、2)収益性向上型、3)エコシステム形成型の特性のもとに15存在する。

原田 欧米が先行し、日本は出遅れ気味。企業がBOPビジネスを始めるための調査費を支援しているJICAもなかなか事業化に結び付かないと嘆いているが、成功事例は?

平本 確かに外部の視点から見て事業の柱として動いていると捉えることができるのは住友化学くらいで、日本としては「ポスト住化」が課題だ。他方で、日本にはBOPビジネスという概念が現れる前から類似する事業を続けてきた企業はたくさんある。ヤクルトは良い事例だ。

ただ、これから新しく作るとなるとハードルが高い。海外の先進企業では、5、6年前は「勉強中」というところが大半だったが、ここへきてようやく、BOPビジネスの位置づけが決まってきた。CSVもそうだが、ネスレにしろ、ユニリーバにしろ、シーメンスにしろ、経営者が世界の課題とBOPビジネスをようやく理解した段階ではないか。

その点、日本企業はまだまだで、いろいろチャレンジはしているが、成長は途上で、経営者も経験・知識が不十分であるため、経営戦略にBOPビジネスが組み入れられてはいない。

原田 もっとも大企業はだめだが、中小企業は元気なところもあるのでは。

平本 石川県金沢市に本社のある会宝産業は中古車リサイクルの産業モデルを確立している会社だが、ナイジェリアでリサイクル工場とトレーニングセンターを運営することを通じてBOPビジネスを実施している。

廃品回収や自動車修理は、BOP層の主要な職業のため、効果は大きい。また、会宝産業は中古品の品質基準をつくるなど、取り組みを世界に広げる為の工夫をしているところが秀逸である。

具体的には、会宝産業の独自規格である中古エンジンの品質を評価する仕組みJRS(ジャパン・リユース・スタンダード)をベースとしたPAS777(パススリーセブン)という世界初の中古エンジンに関する公開仕様書が発行、将来は国際規格(ISO)を目指すという。

また、大阪市のフロムファーイーストはカンボジアで美容製品を使ったBOPビジネスを展開している。オーガニックのシャンプーや石鹸を現地で生産するほか、美容師育成を試みている。美容師もBOP層の女性にとっては主要な職業のため、これも効果は大きいと考えられる。

■ アフリカ案件、相談が殺到

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原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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