■CSVで多様な「資本」を有効活用
CSV/シェアード・バリューは、社会・関係資本や自然資本を含む多様な資本を活用して企業価値を創造するための考え方を提示します。
バリューチェーンのCSV は、製造資本、知的資本、人的資本といった社内リソースに加え、社会・関係資本であるサプライヤーやチャネルといった社外リソースを新たな視点で活用します。
食品メーカーが、原材料農家に技術・ノウハウを提供し、高品質な原材料を安定調達する。途上国において、女性を教育し販売員として活躍してもらい、新しい市場を開拓する。こうした活動は、社会・関係資本の強化を通じてバリューチェーンを強化し、企業価値を創造しています。
クラスター/競争基盤のCSVは、人材、インフラ、規制や事業慣行、消費者の意識、自然資源など、外部リソースおよび外部リソースとの関係を強化することにより、企業の競争力を強化します。基本的に社会・関係資本や自然資源などを活用して企業価値を創造するものと言えるでしょう。
IT企業がIT人材を育成することで、市場拡大や自社の競争力強化につなげる。途上国でものづくりなどに必要な人材を育成し、競争力を強化する。自社製品や技術を広めるために必要な新たなルールを整備する。消費者に新しい生活習慣を身につけてもらい、自社製品を普及させる。新しい市場で社会貢献活動を行いつつ、市場での成功要因を理解し、ステークホルダーとの関係を構築する。こうした活動は、社会・関係資本を強化しつつ、企業価値を創造しています。
そして、飲料メーカーが水資源を自社の競争力の源泉と位置づけ、水資源の保全活動を推進する。食品メーカーが、水産資源の持続可能性を担保するため、水産資源保全のルールを普及させる。こうした活動は、自然資本を強化しつつ、企業価値を創造していると言えます。
CSV/シェアード・バリューのフレームワークを用いて、社会関係資本、自然資本を含む多様な資本を活用し、企業価値を創造することができます。社内外のリソースを味方につけ、最大限に活用して、差別化の源泉とすることは、これからの時代に求められる視点です。
【みずかみ・たけひこ】東京工業大学・大学院、ハーバード大学ケネディースクール卒業。旧運輸省航空局で、日米航空交渉、航空規制緩和などを担当した後、アーサー・D・リトルを経てクレアンに参画。CSR/CSV のコンサルティングを主業務とする。ブログ「CSV/ シェアード・バリュー経営論」共著『CSV 経営』(NTT 出版)
(この記事は、株式会社オルタナが2013年11月5日に発行した「CSRmonthly 第14号」から転載しました)