記事のポイント
- 米国によるイラン攻撃でホルムズ海峡の封鎖の先行きは不透明だ
- 今回、いかに日本の産業がナフサに依存しているかが浮き彫りに
- しかし、プラ類はナフサ以外でも作ることができる。それがバイオプラだ
2026年2月28日に始まった米国・イスラエルとイランの戦争はホルムズ海峡の封鎖を招き、外交交渉は続いているものの、まだ完全な状態には戻っていない。ホルムズ海峡封鎖によってわが国は原油やナフサの輸入が大幅に減少し、特にナフサから作られるプラスチックや溶剤のような各種の石油化学製品の品切れが大きな問題となった。(オルタナ客員論説委員・財部明郎)

■植物油や穀物などから作るバイオプラスチックに注目
わが国の産業や国民生活が、普段は一般にはあまり目にすることのない「ナフサ」に大きく依存していることが改めて浮き彫りになった形である。今後、原油やナフサの輸入先を多様化するとともに、エネルギー源やプラスチックなどの脱石油化が進められていくことになるだろう。
ところで、プラスチックはナフサ以外のものでも作ることができることはご存知だろうか。プラスチックは天然ガスや石炭からも作ることができ、実際に作られているのだが、近年、注目されているのが植物油や穀物などから作るバイオプラスチックである。
このバイオプラスチック、大学の研究室で研究中などというものではなく、確立した技術であり、すでに商業生産段階に入っている。しかもわが国にも導入されて次第にその利用範囲が広まりつつあることはあまり知られていない。
この記事では、ナフサに頼らないプラスチックとして期待されるバイオプラスチックについて解説する。

■バイオプラスチックには2種類ある
バイオプラスチックとよばれるプラスチックには2種類ある。ひとつは植物を原料として作られたプラスチックで、原料の植物つまりバイオマスのバイオをとってバイオプラスチックまたはバイオマスプラスチックとよばれる。
もうひとつは生分解性プラスチックというもので、使用後廃棄されたときに環境中で生化学的に分解されてしまうものである。このプラスチックは生分解、つまり「バイオデグラデーション」の「バイオ」からバイオプラスチックといわれる。
どちらもバイオプラスチックだが、前者は原料としてバイオマスが使われるという製造時の話。後者はバイオの力によって分解されるかどうかという廃棄されたあとの話だ。ここでは前者、つまり原料として石油系ナフサを使わず、バイオマスが使われるプラスマスチックを紹介したい。
■バイオマスプラスチックの原料と製造方法とは
バイオマスプラスチックの原料は大豆、パーム、ナタネのような油糧作物から抽出される油脂つまり食用油、あるいはトウモロコシやサトウキビなどを発酵して作られるバイオエタノールである。
そのほか、農業廃棄物や森林廃棄物、都市ごみ、藻類のような非作物系の原料についても研究が進められているが、既に実用化されているのは油脂やバイオエタノールを原料とするものだ。
大豆油やパーム油などの油脂を原料とする場合は、油脂をまず「水素化分解」という方法で分解する。これは石油精製でよく使われるお馴染みの技術だ。この水素化分解によってHVO(水素化植物油)という軽油代替燃料(いわゆる「バイオディーゼル」)が作られるが、そのとき同時に石油から作られたナフサとほぼ同じものができてくる。
これが「バイオナフサ」と呼ばれ、石油から作られたナフサと同様にナフサクラッカーとよばれる装置で分解されてエチレン、プロピレンなど基礎化学品となり、これを重合(※1)することによってポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチックを作ることができる。
※1 重合: 石油などから抽出された小さな分子(モノマー)を数千〜数万個化学結合させ、網の目や鎖のようにつなぎ合わせて巨大な高分子(ポリマー)にする反応のこと
バイオエタノールを原料とする場合は、まずバイオエタノールの脱水反応によっていきなりエチレンが製造される。これは「バイオエチレン」と呼ばれるが、石油ナフサから作られたエチレンと化学的な違いはない。このバイオエチレンを重合すればバイオナフサの場合と同じようにポリエチレンなどのプラスチックを作ることができる。
(この続きは)
■バイオプラスチックの4つの利点とは
■既存の石油化学プラントを使用できる
■バイオプラスチックの問題点とは
■バイオプラはすでに日本にも導入されている
■ホルムズ封鎖などの地政学リスクが国の盲点だった一面

