コーポレートガバナンス改革なくして持続的な成長はない

記事のポイント


  1. 日本企業のガバナンス改革は形式的な対応に留まっているケースが多い
  2. 守りと攻めの両面からコーポレートガバナンス改革の実質化が求められている
  3. リスクの最小化(守り)とイノベーション促進(攻め)のバランスがカギだ

コーポレートガバナンス改革は、日本企業がこれからの不確実な時代を乗り越え、経営の安定と持続的な成長を実現するための要諦です。2015年に日本版コーポレートガバナンス・コードが策定(2018年と2021年に改訂)されたことで、企業が透明性や健全性を高めつつ、株主やステークホルダーに対する責任を果たしながら、持続的な企業価値向上を実現するための枠組みが明確化されました。しかしながら、未だに形式的な体制の整備に留まっている企業が多いのが現状です。今こそ日本企業は、コーポレートガバナンス改革の実質化に向けて、守りと攻めの両面から真剣に取り組むことが求められています。(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家=遠藤 直見)

今日の経営環境は、地球環境や社会の持続可能性への意識の高まり、グローバル化や技術革新の急速な進展、地政学的リスクの顕在化など、さまざまな要因により益々複雑化しています。短期的な視点での利益追及だけでは市場の急激な変化やリスクに対応しきれず、企業価値の毀損や社会的信用の低下を招く可能性があります。

企業は、自社の価値観(パーパス、企業理念など)を踏まえた長期ビジョンの実現に向けて、サステナビリティやESG(環境・社会・ガバナンス)といった視点を組み込んだ社会価値と経済価値の同時実現に資するビジネスモデルや経営戦略の構築が急務となっています。

そこで求められているのが、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指す経営です。そして、その基盤となるのがコーポレートガバナンスです。

■コーポレートガバナンスは守りと攻めの両面から取り組もう

金融庁と東京証券取引所が策定したコーポレートガバナンス・コードによると、コーポレートガバナンスとは「会社が、株主をはじめ顧客・ 従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」を意味します。

従来我が国のコーポレートガバナンスは、取締役会が内部統制やリスク管理、情報開示体制などを適切に整備し、企業活動に伴う不祥事を未然に防ぐ機能を意味していました。いわゆる、「守りのガバナンス」の側面が強調されてきました。

しかし近年では、「攻めのガバナンス」も強調されるようになりました。取締役会が企業の価値観であるパーパスや企業理念を明確に打ち出し、戦略的な方向付けを行うとともに、経営陣による企業の持続的な成長に向けた積極的なリスクテイクを支える機能でもあります。

コーポレートガバナンス改革に向けて、これまで日本企業はさまざまな施策に取り組んできました。これにより、社外取締役の充実、委員会体制の整備、情報開示の強化などに一定の成果が見られるものの、形式的な対応に留まっているケースが多いとの指摘もあります(金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書、経済産業省「稼ぐ力の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会」事務局資料など)。

企業はコーポレートガバナンスの形式的な対応から脱却し、その「実質化」に向けて、守りと攻めの両面から戦略的に取り組むことが必要です。

■内部統制や取締役会の監督機能の強化が「守り」
■「守りのガバナンスの失敗」は企業価値を大きく損なう
■リスク防止に加えて、新しい価値を生み出す「攻めのガバナンス」
■「攻めのガバナンス」は日立製作所と味の素に学べ
■守りと攻めの両立でコーポレートガバナンス改革の実質化を

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遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

東北大学理学部数学科卒。NECでソフトウェア開発、品質企画・推進部門を経て、CSR/サステナビリティ推進業務全般を担当。国際社会経済研究所(NECのシンクタンク系グループ企業)の主幹研究員としてサステナビリティ経営の調査・研究に従事。現在はフリーランスのサステナビリティ経営研究家として「日本企業の持続可能な経営のあるべき姿」についての調査・研究に従事。オルタナ編集委員

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キーワード: #ガバナンス

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