記事のポイント
- チャットGPTなど「生成AI」を業務に導入する企業・組織は増えてきた
- 一方、「AIガバナンス」の遅れはグリーンウォッシュリスクにもつながる
- 「『AIガバナンス』の構築は経営課題として捉えるべき」と専門家
「リスク管理なきAI戦略はもはや成立しない。『AIガバナンス』の構築を怠れば経営リスクに直結する」――。AIガバナンスの重要性を提唱する専門家はそう言い切る。チャットGPTなど生成AIを業務に導入する企業は増えてきたが、AIガバナンスの構築が遅れるとグリーンウォッシュだと批判を受ける可能性もある。(オルタナS編集長=池田 真隆)
米新興企業「オープンAI」が昨年11月に無料で公開した「チャットGPT」など生成AIを業務に取り入れる企業が増えてきた。
大和証券は4月、チャットGPTを書類作成業務などに活用すると発表した。約9000人の全社員が対象だ。生成AIを導入するにあたり、社内に専門組織を立ち上げたのが日立製作所だ。同社は5月15日、「ジェネレーティブAIセンター」を新設し、5月中に生成AIを業務に活用できるようにする。
生成AIは文書作成だけでなく、顧客との「対話型サービス」、マーケティングに生かす「データ分析」、一部のデータから作り上げる「合成データ生成」など、活用できる範囲は広い。経産省は2020年にAIの導入による経済効果は2025年に34兆円に及ぶと試算した。
業務の効率性が上がったという声が出る一方、こうした生成AIにはハルシネーション(虚偽の結果の生成)などの「AIリスク」も潜む。AIに詳しい佐久間弘明氏は、「AIにはこれまでのソフトウェアにはないリスクが存在する」と指摘する。
佐久間氏は、2019年に米ハーバード大学の研究者たちが創業したシリコンバレー発のAIスタートアップ「ロバストインテリジェンス」の国内政策企画担当者だ。同社は、米国国防総省、PayPal、Expedia Inc.などに加えて、国内企業では、東京海上、セブン銀行、NTTデータ、NECなどの大手企業を顧客に持つ。AIリスクに対応するため、企業の「AIガバナンス」の構築を支援する。
■ESG活動に直結する「倫理的リスク」