企業の「女性役員ゼロ」、「古い言い訳」は通用しない

記事のポイント


  1. 世界最大級の政府系ファンドなど「女性役員ゼロ」の日本企業にノー
  2. 今年もキヤノンや豊田自動織機などは女性役員の選出なし
  3. 「ガバナンス報告書」に記載の言い訳から企業の本気度が透けて見える

女性役員のいない日本企業の議案に反対票を投じる機関投資家が増えている。2022年7月末時点ではプライム上場企業の2割弱の344社に女性役員がいなかった。その中の一社、キヤノンの今年の株主総会では、御手洗会長兼社長CEOの取締役再任議案に多くの反対票が集まった。一方、今年初めて女性役員の選任に動いた大企業もある。女性役員を選任しない企業は、その理由をどう説明してきたのか。各社の説明から透けるその本気度を考察する。(北村佳代子) 

22年7月時点で東証プライム上場企業の2割弱の会社が女性役員ゼロだった

世界最大級の政府系ファンドであるノルウェー政府年金基金は2023年4月、今年開催される日本企業の株主総会で、女性役員ゼロの企業の議案を否決する方針だと表明した。米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)やグラスルイス、大手運用会社のアセットマネジメントOneなども、同様の意向を示す。 

EUでは、上場企業に2026年半ばまでに、社外取締役の40%以上または全取締役の3分の1以上に女性を登用することを義務付けた。米証券取引所ナスダックも、2026年までに1人以上の女性と、別に1人以上の人種・性的マイノリティの取締役選任を義務化した。 

日本でも、企業統治の模範的なあり方を定めたガイドライン「コーポレートガバナンス・コード(CGコード)」の中で、取締役会の実効性を担保するための前提条件として、以下の規定がある。 

「取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、ジェンダーや国際性、職歴、年齢の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである。」(一部抜粋) 

内閣府男女共同参画局によると、2022年7月時点で女性役員のいないプライム上場企業は、全体の18.7%にあたる344社だった。その数は前年の732社(東証一部上場企業全体の33.4%)から減ったが、「女性役員がいない企業リスト」には、キヤノン、東レをはじめとした有名企業も名を連ねていた。 

■企業の言い訳を「ガバナンス報告書」から読み取る 

「CGコード」の原則を順守しない場合、各社はその理由を「コーポレートガバナンスに関する報告書(ガバナンス報告書)」の中で説明しなければならない。いわゆる「コンプライ・オア・エクスプレイン(順守せよ、さもなければ、説明せよ)」ルールだ。 

取締役に女性を選任していない企業は、「CGコード」の「原則4-11. 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件」を順守していない理由の説明義務がある。 

■キヤノンの株主総会から見える「女性役員ゼロ」のリスク 

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北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

オルタナ副編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部。

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