記事のポイント
- 昨年末、日本最大級のバイオマス発電所が山口県下関市で稼働し始めた
- 一方、燃料価格の高騰でバイオマス発電所は全国各地で経営が行き詰まっている
- 経営の見通しは立っているのか、世界の潮流を見誤らないことを願う
2024年12月末、山口県下関市の長府バイオマス発電所が稼働し始めた。輸入する木質ペレットを燃料とする出力規模7万4950キロワットの日本最大級のバイオマス発電所だ。だが同じ12月に、静岡県富士市の鈴川エネルギーセンター発電所が発電を停止したことは、あまり知られていない。(森林ジャーナリスト=田中 淳夫)
二つの発電所を持っていた北海道バイオマスエネルギー社は、昨年10月に清算した。今年1月には和歌山県の新宮フォレストエナジー社も破産手続に入った。バイオマス発電所は、全国各地で経営が行き詰まっており、停止や経営陣の交代などが相次いでいる。
その背景には、燃料価格の高騰がある。主な燃料としてきた木質ペレットやチップ、PKS(ヤシ殻)は、いずれも輸入しているが、原材料不足や規制強化などの問題から生産減と値上げが続くのだ。円安も価格を引き上げている。
世界最大の木質ペレット生産会社であるアメリカのエンヒバ社は昨年破産した。生産コストの増大などから価格の逆ざやが生じたからだ。現在再建中だが、おそらく大幅な価格引き上げや供給量減になるだろう。それらを利用してきた発電所は、採算が危ぶまれる。
木質ペレットの主要生産国はアメリカとカナダ、ベトナムだが、いずれも先行きは危うい。北米は天然林の破壊と製造時の大気汚染が問題になっている。ベトナムは短期間に伐採と造林を繰り返したため土壌劣化が進み成長力が落ちて、収穫サイクルが鈍っている。
■世界各国はバイオマス発電に懐疑的になってきた