カナダの森林専門家ら、経産省に輸入バイオマス中止求める

記事のポイント


  1. カナダの森林専門家が、母国の原生林伐採の実状を訴えるため来日した
  2. 国内外の環境NGOと連名で、経産省に輸入バイオマスの支援中止を求めた
  3. カナダ産木質ペレットの輸出先は、日本が英国を抜いて1位に

カナダの森林専門家がこのほど、母国の原生林伐採の実情を訴えるため来日した。11月29日には、国内外の環境NGO19団体とともに経産省に輸入バイオマスの支援中止を求める書簡を提出した。カナダ産木材の用途としてバイオマス発電用木質ペレットの需要が高まっており、日本は英国を抜いて1位の輸出先になった。初来日の専門家らに、現地の実情を聞いた。(オルタナ編集部・長濱慎、下村つぐみ)

木質ペレット用に伐採が許可された原生林(写真:Conservation North)

経産省「FITの目的は持続可能なエネルギーの普及」と理解

書簡提出の発起人となったのは、カナダ・ブリティッシュコロンビア州(BC)で活動する森林攪乱生態学者のミシェル・コノリー氏だ。環境NGO「コンサベーション・ノース」も運営する。

書簡には、世界73ヵ国に200万人のサポーターがいる国際環境NGO FoE Japanをはじめ、日本、カナダ、米国、オランダ、インドネシア、ガーナなど国内外19の環境NGOも名を連ねた。

書簡では、輸入バイオマス燃料を使うバイオマス発電の支援中止、発電時のCO2排出を温室効果ガス評価に含めること、輸入バイオマス燃料をFIT(固定価格買取制度)の対象から外すことなどを要請した。

近年日本では、輸入木質ペレットなどを燃料とする数万キロワット規模の大型木質バイオマス発電の建設が相次ぐ。国のFIT制度がこれを推し進め、ベトナムやカナダをはじめ、木質ペレットの輸入量はここ10年で60倍以上に増えた。

書簡は経産省と林野庁の担当者に手渡された。提出に立ち会ったFoE Japanの満田夏花(みつた・かんな)事務局長によると、経産省はFIT制度でも持続可能性を重視していると述べ、林野庁は、カナダの森林伐採に関する規制の動向に関心を示したという。

経産省に書簡を手渡すミシェル氏(右)(写真:FoE Japan)

■2022年はカナダ産ペレットの55%が日本へ

カナダはベトナムと並ぶ木質ペレットの輸入先となっており、2022年には同国から140万トン以上を輸入した。カナダにおいては英国を抜いて日本が輸出先1位となり、2022年は55%が日本向けだった。

木質ペレットの主要な供給地となっているのが、カナダの森林の約60%が集中するBC州だ。同州の森林面積は日本の国土面積の約1.5倍あるが、原生林が伐採され、トナカイの仲間である絶滅危惧種・カリブーなどの野生動物の生息地が脅かされている。

2023年は過去最大規模の山火事が起き、同州で東京都の約10倍以上の森林が焼失した。ここ約20年間で原生林の面積が10%近くも減少し、15億トンのCO2が大気中に放出されたたとする調査結果もある。

輸入木質バイオマス発電は、気候変動対策においても課題が残る。バイオマス産業社会ネットワークの泊みゆき理事長は、以前オルタナに寄稿した記事内でこう話した。

「輸入木質ペレットによる発電は、石炭火力より68%も排出量が多い。伐採後に植林されても、樹齢数百年の天然林と人工林では、蓄積される炭素量には3倍以上の大きな差がある」。

伐採(赤い部分)が進む原生林(写真:Conservation North)

オルタナ編集部はミシェル氏と、ともに来日したBC州のジャーナリスト・ベン・パーフィット氏の2人にインタビューを行った。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #生物多様性

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