
記事のポイント
- 「星野リゾート 西表島ホテル」は本格的なエコツーリズムリゾートを目指す
- 「エコロジカルなホテル運営」を掲げ、ゼロエミッションに取り組む
- このほか、イリオモテヤマネコの保護活動やネイチャーツアーなども展開
エコホテル巡礼・特別レポート(ホテルジャーナリスト・せきねきょうこ)
西表石垣国立公園内に位置する「星野リゾート 西表島ホテル」では、自然環境保護、持続可能な観光を目指し、環境省、ピッキオとの協働作業により、日本初の本格的なエコツーリズムリゾートを構築する様々な取り組みが現在進行形だ。
とりわけ具体的に3つの取り組みを掲げているのが分かりやすい。さらにホテルステイのゲストにも啓発活動をしながらツアーの数々に参加を促し、島のサステナブルな観光の仕組みづくりに取り組んでいる。それら3つの項目とは、「エコロジカルなホテル運営」「島の魅力と価値を感じるネイチャーツアー」「イリオモテヤマネコの保護活動」だ。詳細は後述しよう。
■イリオモテヤマネコの交通事故を防ぐ
西表島は、日本の南西部に浮かぶ八重山諸島の一部である。亜熱帯植物のジャングルに覆われ、マングローブの繁る水の豊富な島であり、2021年7月26日、奄美大島、徳之島、沖縄島北部と共にユネスコの「世界自然遺産」に登録された。
古くから、島には野生のイリオモテヤマネコが生息していることで知られているが、世界遺産の冠を得てからは、ダイナミックな自然の素晴らしさやヤマネコに加え、「世界自然遺産」としての島に来る観光客が増加したことも確かだ。
野生のヤマネコは簡単には観ることもできないが、100頭ほどと推察される希少な生息数のヤマネコを保護するために、環境省、地元の活動家も含め、「星野リゾート 西表島ホテル」では、直接野生動物に手を下すことなく、外堀を埋めるがごとく野生動物保護に取り組んでいる。

例えば、その取り組みのひとつに、車にひかれ命を落とす路上での交通事故「ロードキル」を無くすために、時速40㎞に決めている。道路には「イリオモテヤマネコ出没中」と、走行の注意喚起を促す看板もしばしば見かける。
実際に島に降り立つと、緑深い森やジャングルに覆われた島のほとんどの部分は人の手が加わらない原始林であることが見え、怖いほど圧巻の森が随所に迫りくる。
また、水場が豊富でダイナミックな滝や水の澄んだ川が多くある島ゆえに、イリオモテヤマネコは島の全域に生息し、主な生息地は山麓から海岸にかけての低地部分という。水場近くにはカエルや鳥、ネズミ、トカゲ、コオロギ、ヤモリなどが豊富にいるからだ。
「星野リゾート 西表島ホテル」では、軽井沢での地域生態系保全活動で知られるピッキオ(2005年・環境省「第一回エコツーリズム大賞」受賞)とのコラボレーションや、星野リゾートが取り組んできた「環境経営」の知見を活かして、世界遺産の西表島で持続可能な観光の仕組みを造り上げようとスタッフ一丸となって構築中だ。
山やジャングル、マングローブなどをゲストに案内するスタッフは、全員がガイド免許必須のため取得、また、水難救助員の資格も取得している。

■星野リゾートが目指すCSV経営とは
「星野リゾート 西表島ホテル」が掲げる第一の理念は、「エコロジカルなホテル運営」である。プラスチックごみ削減のために「1WAY(使い捨て)プラスチックフリー」「ペットボトルフリー」に挑戦し、ゼロエミッションを目指す。
部屋の冷蔵庫にも、水はウォーターサーバーに入れて冷やされている。2021年8月からはショップでも自販機でもペットボトル販売を中止した。
中でも画期的なのはランドリールームだ。「wash-plus」との協働プロジェクトにより、洗剤レスのスマートランドリー「wash+ comfort」を導入。洗剤を使わずアルカリイオンのみで洗いあげるという設備は、ホテル業界初の洗剤レスランドリーである。

星野リゾートは以前から持続可能な観光について、経済価値、社会的な価値を両立するCSV経営(共有価値の創造、社会問題を解決すると同時に企業自体も利益を得る利益を獲得する)を推進。環境経営、伝統文化継承なども積極的に行い、このランドリーシステムもその一つと考え、すでに星野リゾートでは他の施設にも導入を済ませていると言う。

■イリオモテヤマネコの生態に迫るネイチャーツアー