「環境水族館」館長に聞く、イルカショーに頼らない水族館経営

屋外のビオトープやタッチプールと一体化したアクアマリンふくしま
屋外のビオトープやタッチプールと一体化したアクアマリンふくしま

WAZA(世界動物園水族館協会)残留を決定したJAZA(日本動物園水族館協会)会員の水族館は、イルカを追い込み漁から調達できなくなった。繁殖可能な施設や技術がない水族館ではイルカショーの存続自体が危ぶまれるが、ショーができないことが経営難に直結するとは限らない。ふくしま海洋科学館(アクアマリンふくしま)は、2000年の開館当初から、ショーを行わない方針を積極的に打ち出している。(編集委員=瀬戸内千代)

アクアマリンふくしまは公立の水族館で、福島県が建設し、公益財団法人ふくしま海洋科学館が管理運営を担っている。イルカやアシカなど海獣類のショーを一切行わず、「しょうがない」をもじって「ショーがない水族館」というテレビCMを流したこともある。

計画段階から関わっていた安部義孝館長は、ショーをしない理由について、「ショーの時間に一斉にお客さんが移動し、観覧ルートの流れが崩れてしまう。またショーにはコストも労力もかかるので、肝心な展示に注力できなくなる。集客のために途中からイルカショーを導入した水族館も、その点で苦労されているようだ」と語る。

とはいえ、華やかなイルカショーに期待する客も少なくない。「確かにショーが無いことに対するクレームはたくさんあった。しかし最近は減っている。当館の理念をご理解くださったのではないか」。

安部館長は開館3周年を機に「環境水族館宣言」を発表。2010年には東日本で初めて、釣りをしてその場で魚を食べられる体験施設を併設するなど、食育も含めた総合学習的な展示に、いち早く取り組んできた。

親潮と黒潮がぶつかる「潮目」を表現した大水槽の前には、2013年秋に、資源量の安定したネタを味わう寿司処を設け、持続可能な魚食普及にも努める。2015年7月には、海山川の循環を象徴する屋外展示「わくわく里山・縄文の里」もオープン予定だという。

東日本大震災で被災したため、入館客数は、いまだ震災前には届かない。それでも着実に年々増加しているのは、にぎやかなショーはなくても熱い「理念」があるからではないだろうか。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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