記事のポイント
- シラスウナギの漁獲量が増加する中、取り放題の状況が続いている
- 日本の緩すぎる上限規制に加え、周辺国は合意した上限すら守る様子もない
- EUは、ウナギ全種のワシントン条約下での規制を提案する準備を進める
シラスウナギの漁獲量が増加する中、取り放題の状況が続いている。日本の緩すぎる上限規制に加え、周辺国は合意した上限すら守る様子もない。EUは、ウナギ全種をワシントン条約下での規制対象にする提案の準備を進める。日本は反対する姿勢だが、シラスウナギ取り放題の漁業を放置している日本流の資源管理では、国際的な議論の場で説得力を持つとは思えない。(井田徹治・共同通信社編集委員兼論説委員/オルタナ論説委員)

今年の漁期はシラスウナギ(ウナギの稚魚)が「豊漁」だそうだ。宮崎県では、採捕量は556キログラムで、過去15年で最多だった。前年度の3倍近くで500キロを超えるのは2009年度以来だ。鹿児島県も2024年度の漁獲量が2492.3キロだったと発表。前年度の3.2倍で、34年ぶりに2千キロを超えた。
採捕量が増えたとはいえ、資源の減少が問題になる前のレベルには及ばず、これを豊漁と呼ぶのは疑問だ。
水産庁によると2月末までに日本の養殖池に入れられたシラスウナギの量は輸入品を含めて13トンで、昨年同期の9.2トンよりは多いものの、期待されたほどの「豊漁」ではない。
ニホンウナギの資源保護策などはないに等しいので、資源状況が改善したとは考えられず、自然変動の範囲内とみるのが妥当だろう。水産資源は環境や海況などの影響で一時的に増えることがあり、これを卓越級群と呼ぶ。自然増加分は貴重な資源なので、これが増えるように残していけば資源回復につながる。
だが、現在起こっていることはそれにはほど遠い。日本同様に「豊漁」が続いている中国、韓国、台湾などでは「シラスウナギ取り放題」の状況が続いているからだ。
■池入れ量の上限規制は機能せず
関係者によると中国の池入れ量(養殖のために養殖池に入れられるシラスウナギの量)は100トンを超えた。韓国、台湾、日本でも増えているので、今期の池入れ総量は150トン近くになると見込まれている。
2014年に水産庁などがシラスウナギの資源保護策として鳴り物入りでアナウンスした日中韓台4極による池入れ量の上限は、日本27.1トン、中国36トンなどで総計78.8トンなのだから、今回の豊漁騒動は、この合意が全く機能していないことを示している。
日本でも池入れ量が上限に近づかない限り「取り放題」の状況が続くので、シラスウナギの卓越級群はつぶれてしまうことが濃厚だ。
■ワシントン条約での規制対象にする提案も
■日本流「資源管理」に説得力なし