記事のポイント
- 日本企業のコーポレートガバナンスの弱みは「稼ぐ力」の強化にある
- 経産省が「取締役会5原則」と「稼ぐ力」のCGガイダンスを策定した
- サステナビリティを統合した価値創造ストーリーの実践が「稼ぐ力」に
経産省はこのほど、日本企業の中長期的かつ持続的な収益性・資本効率の向上を目的として、『「稼ぐ力」を強化する取締役会5原則』(以下、取締役会5原則)と『「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス』(以下、「稼ぐ力」のCGガイダンス)を公表しました。今後は、TOPIX500を構成するような資本市場への影響力が大きい企業が、これらの指針を踏まえ、サステナビリティを統合したコーポレートガバナンスに率先して取り組むが期待されます。(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家=遠藤 直見)

■ガバナンスは価値創造ストーリーの「基盤」
昨今、脱炭素社会や循環型社会の実現、AI・デジタル化の進展、経済安全保障の強化など、複雑かつ相互に関連する社会課題への関心が高まっています。加えて、米中対立、ウクライナ戦争、中東情勢の緊張といった地政学的リスクも深刻化しています。
こうした状況により、企業を取り巻く外部環境は一層複雑化かつ不確実性を増しており、取締役会と経営陣は難しい意思決定を迫られています。
現代の企業には、このような環境変化を成長の機会と捉え、イノベーションによる付加価値の創出や生産性の向上を通じて、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現することが求められています。
そのためには、確固たる価値観(パーパス、企業理念など)に基づき、自社の競争優位性を活かした「価値創造ストーリー」の構築・実行が重要です。
経産省は次の通り価値創造ストーリーを定義しています。
「長期的に目指す姿の実現に向けて、どのようなビジネスモデルを通じて、どのような社会課題を解決し、どのように長期的な企業価値向上に結びつけていくかについての一連のストーリー」
この価値創造ストーリーの構築と実行を支える「基盤」こそが、コーポレートガバナンスです。
■日本企業のガバナンスの弱点は「攻め」にある
■価値創造ストーリーの構築など経営陣に求める5原則
■「稼ぐ力」の強化はサステナビリティそのもの
■価値創造ストーリーにサステナビリティの統合を
■「稼ぐ力」は財務指標だけでは測れない