記事のポイント
- 第2次トランプ政権は、強引な手法で米国の気候政策を急速に後退させている
- 国際協調を基盤とする気候外交の根幹を揺るがしかねない
- 民主主義的な気候政策はどうあるべきか、松下・京大名誉教授に寄稿してもらった

■本誌81号第一特集「反ESGでも変わらないもの」から
第2次トランプ政権は、強引な手法で米国の気候政策を急速に後退させている。パリ協定からの再離脱や環境規制の緩和など、国際協調を基盤とする気候外交の根幹を揺るがしかねない。民主主義的な気候政策はどうあるべきか。松下和夫・京都大学名誉教授に寄稿してもらった。

松下和夫(まつした・かずお)
京都大学名誉教授、地球環境戦略研究機関シニアフェロー、日本GNH 学会会長。東京大学卒業後環境庁入庁。ジョンズホプキンス大学大学院修了。環境省、OECD 環境局、国連地球サミット上級環境計画官、京都大学大学院地球環境学堂教授など歴任。専門は環境政策論、環境ガバナンス論など。主要著書に、「1.5℃の気候危機」、「地球環境学への旅」、「環境ガバナンス」、「環境政治入門」など。
第2次トランプ政権は、パリ協定からの再離脱や化石燃料増産の推進などの大統領令の発出、気候科学への攻撃、気候政策関連行政機関の職員や予算の縮小、環境規制の緩和やクリーンエネルギー支援の縮小などを矢継ぎ早に進めている。
その手法は極めて強引で、政府機関は裁判所の命令を無視し、法的拘束力のある契約の資金を凍結し、自分たちの目的に合うように規制を再解釈している。権力行使が極めて迅速・恣意的かつ広範囲で意外性に富んでいるため、政権批判勢力の反撃は遅れがちである。
このような政策転換は、米国内での取り組みを遅らせるばかりでなく、国際連携の弱体化や途上国支援の縮小など、世界的に悪影響を及ぼす。
■政策の背景に「反知性主義」も
「まっとうで民主主義的な気候政策」とは何か。筆者は次のような点が重要であると考える。