GRIが気候・エネルギー基準に続き、DEI分野の基準案

国際的なサステナビリティ開示基準を策定するGRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)は現在、開示基準の大幅な改訂を進めている。気候変動およびエネルギーに関する新たな基準の発表に続き、このたび、労働やダイバーシティに関する改訂草案を公表した。いずれの基準もパブリックコメントを経て、2025年中の最終化を目指している。(オルタナ輪番編集長=吉田広子)

GRIが公表した気候変動およびエネルギーに関する新基準は、GHGプロトコルやSBTiの「コーポレート・ネットゼロ・スタンダード」と整合し、IFRS S2(気候関連開示基準)やESRS E1(欧州気候基準)とも高い互換性を有している。

気候変動に関する基準「GRI 102」では、科学的根拠に基づく排出削減目標の設定や、パリ協定をはじめとする国際的な気候目標との整合的な取り組みを企業に促している。

温室効果ガス(GHG)の実質的な削減を最も重要な緩和策と位置づけるとともに、「公正な移行」の視点を新たに取り入れ、労働者、地域社会、先住民への影響についても報告対象とした。さらに、カーボンクレジットの使用については、その範囲と目的の開示も求めている。

一方、エネルギーに関する基準「GRI 103」では、組織のエネルギー使用とその影響についての包括的な報告を求めている。再生可能・非再生可能エネルギーの使用状況や、エネルギー削減に向けた具体的な取り組みを明確化し、脱炭素化を企業戦略の中核に位置付けるよう要請している。

続けて、7月1日には、「ダイバーシティ&インクルージョン(GRI 405)」および「差別禁止と平等な機会(GRI 406)」に関する基準の改訂草案を公表した。

ダイバーシティ&インクルージョンの改訂案では、ダイバーシティとインクルージョンに関する方針が、組織の戦略や業務運営の中でどのように位置付けられ、どのような管理体制と説明責任が伴っているかを明らかにすることが求められている。透明性の向上を目的とし、より具体的な開示項目と指標が提示された。

差別禁止と平等な機会の改訂案では、直接的および間接的な差別の要因を明確に示すとともに、報告された差別事例について、詳細な内訳を提供することが求められている。合わせて、社会的に脆弱な立場に置かれた人々や、これまで過小評価されてきた人々に対する機会創出の取り組みについても、積極的な開示が期待されている。

GRIは、これら一連の基準改訂を通じて、国際的な報告基準との整合性を確保しつつ、企業の説明責任と社会的影響への配慮をより一層強化していく方針だ。これらの草案については、7月8日(中央ヨーロッパ夏時間17時)にオンライン説明会が開催される予定だ。

yoshida

吉田 広子(オルタナ輪番編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。2025年4月から現職。執筆記事一覧

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キーワード: #サステナビリティ

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