記事のポイント
- NPOは研究者などと共同で社会課題の自分事化について研究を行った
- 自分事化は「俯瞰」「危機感」「内発性」の要素で促進されるとわかった
- NPOはこの研究を生かし、フィールドスタディなどで参加者の自分事化を促す
NPO法人クロスフィールズはこのほど、法政大学大学院の石山恒貴教授、ビジネスリサーチラボ(東京・目黒)と共同で社会課題の自分事化についての研究を行った。その結果、社会課題を自分事化するには、「俯瞰」「危機感」「内発性」の3つの要素が必要なことが分かった。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)
3者は共同研究で「社会配慮行動促進」に関する理論モデルを開発した。社会配慮行動促進とは、社会課題の自分事化を通じた行動発揮のこと。今回のモデル構築によって、個人の社会課題に対する当事者意識がどれだけ育まれたかについて、アンケートを活用した分析を通じて測定・評価することが可能となった。
クロスフィールズはこれまで、社会課題の現場にビジネスパーソンを一定期間派遣する留職プログラムや社会起点で物事を考えるマインドを醸成する社会課題体験フィールドスタディなどを実施。参加者数は3000人以上に上る。
一方で、「社会課題の自分事化」とは具体的に何か、プログラム参加前後で自分事化は育まれているかなどの効果検証は十分に行えていなかった。そこで実証に向けて、石山教授とビジネスリサーチラボと共同で研究。先行研究で実証されている環境配慮行動に関する研究を軸に行い、社会配慮行動促進の理論モデルを開発した。
理論モデルの検証にあたっては、983名の一般モニターにアンケートを実施。モデルの有効性を確認するとともに、自分事化する要素として「俯瞰」「危機感」「内発性」があり、それらが行動につながることがわかった。
研究ではこれらの3つの要素について、次のように定義する。
1.俯瞰: 「実は、自分の行動や意識が社会課題と結びついているかもしれない」など、自身と課題の関連性を俯瞰して考える想像力のこと
2.危機感: 社会課題を重要な問題だと認識し、それにより生活が脅かされるかもしれないと危機感を感じること
3.内発性: 社会課題に対して自発的に取り組みたいと考えること
クロスフィールズではプログラムの効果検証にモデルの活用を始めた。22年9月から23年7月の間に実施した社会課題体験フィールドスタディの参加者にアンケートを実施知ったところ、プログラム参加を通じて社会課題の自分事化が促進されていることが明らかになった。3要素のなかでは「俯瞰」と「内発性」が特に伸びた。
クロスフィールズの西川理菜ディレクターは「今回具体的なモデルの構築とともに変化の測定手法が明らかになったことで、このデータ分析をもとにより大きな社会インパクトの創出を目指すこと、そしてその変化を広く発信することに努めていく」とコメントした。