独立記念日を翌日に控えた7月3日、米トランプ政権は「一つの大きく美しい法案(One Big Beautiful Bill Act)」が下院を通過したことを受け、立法上の勝利を宣言した。メディケア、移民、税制など幅広い分野を網羅したこの大規模法案は、10年間で約4兆5000億ドル(約650兆円)の減税を見込む。一方で、クリーンエネルギー関連の税控除廃止などにより歳出削減を図る設計で、各方面から懸念が高まっている。(外ジャーナリスト協会・寺町幸枝)
とりわけ問題視されているのは、バイデン前政権の「気候法」の骨抜きにより、空気の悪化や熱波の深刻化、電気代の上昇などの悪影響が懸念される点だ。
太陽光や風力発電に加え、関連技術を製造する工場までが影響を受ける。ロサンゼルス・タイムズのコラムニストであるサミー・ロス氏は、4日の紙面で、独立系投資銀行ラザードの調査結果を引用し、「再生可能エネルギーは税控除がなくても最も安価な新規の発電手段である」と主張した。
有権者の気候変動への関心の薄さを問題視し、平均家庭の電気代が年間130ドル(約2万円)上昇する可能性や電力網の脆弱性にも警鐘を鳴らした。
ロス氏は、トランプ政権に対抗してきたカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事のリーダーシップ不足にも言及した。「華麗なる裏切り(Big, Beautiful Betrayal)」とトランプ大統領を非難した知事の声明に反し、州議会は化石燃料業界への譲歩を繰り返してきたと批判。ガス火力は建設費が安くても燃料費が不安定で、自然エネルギーのように無料の燃料ではないため、長期的な安定には再エネへの投資が不可欠だとする。
ロス氏は、「気候対策の前進には有権者一人ひとりが声を上げる必要がある」と強調している。