記事のポイント
- 金融庁は一部のプライム企業へのサステナ情報開示の義務化を先送りする
- 投資家のニーズなどを参考にしながら義務化を開始する時期を検討する
- 金融庁の担当官は「現時点では、義務付けを撤回した事実はない」と答えた
金融庁は「一部プライム企業に対し、サステナビリティ情報開示の義務化を見送る」との日経新聞報道(7月7日付け)を否定し、「今後、数年を掛けて、投資家のニーズなどを参考にしながら、義務化の開始時期を検討する」との方針を改めて明示した。オルタナ編集部の取材に答えた。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

■時価総額1兆円超の企業への方針は変わらない
日経新聞は2025年7月7日、「金融庁はプライム市場に上場する企業の約8割に当たる時価総額5000億円未満の企業(約1350社)について、サステナビリティ情報開示の義務化を見送る」と報じた。
しかし、金融庁の担当官は8日、オルタナ編集部の取材に対して、「義務化の開始時期を検討するだけで、現時点で(全プライム企業への)義務付けを撤回した事実はない」と答えた。
金融庁は今年6月27日、第8回目の金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」を開いた。同会では、サステナビリティ情報開示の義務化開始時期や保証制度について討議した。同開示の義務化はプライム市場に上場する企業が対象で、有価証券報告書上にSSBJ基準に基づいたサステナビリティ情報の開示を求める。
同会では、今後のロードマップの案を策定した。ロードマップ案では、SSBJ基準でのサステナビリティ情報開示を義務付ける時期を示した。
時価総額1兆円以上の企業に対する、義務化開始時期はこれまでと変わらない。最も早いのが時価総額3兆円以上の企業(約70社)で、2027年3月期から義務化する。その翌年の2028年3月期から1兆~3兆円(約100社)の企業に対象範囲を広げる。
■金融庁「現時点では、義務化の方針は変えていない」
■SSBJ基準ではスコープ3の開示を義務付けていた
■GHG排出量の一次データ算定の流れも後退へ
■排出量取引などカーボンプライシングは強まる
■脱炭素に取り組まないことは事業リスクに