記事のポイント
- 国際司法裁判所は「気候変動対策は国の義務」との勧告的意見を公表した
- 化石燃料を巡る規制の不備は「国際法に反する行為になり得る」との見解も示した
- 太平洋島しょ国出身の法学生27人らの訴えが6年越しに実った形だ
国際司法裁判所(ICJ)はこのほど、気候変動に関する各国の法的義務について、勧告的意見を公表した。ICJは「各国は1.5度目標の達成に向けて最大限の努力を払わなければならない」と明言し、化石燃料を巡る規制の不備は「国際法に反する行為になり得る」との見解も示した。この勧告的意見は、太平洋島しょ国出身の法学生27人が主導するグループの訴えを受け、国連総会がICJに諮問していたものだ。(オルタナ輪番編集長・吉田広子)

■バヌアツなど島しょ国の法学生が働きかけ
「この勧告的意見は、既存の国際法を活用して汚染者の責任を明確にし、人々と地球を守るという国家の法的義務を再定義することで、気候正義の流れを大きく変える一歩となった」
太平洋島しょ国出身の法学生らが主導する若者団体「パシフィック・アイランド・スチューデンツ・ファイティング・クライメート・チェンジ(PISFCC)」は、ICJの勧告的意見の公表を受けて、声明を発表した。
PISFCCは、南太平洋大学(USP)法学部の学生27人が2019年に設立した。バヌアツをはじめとする気候変動に脆弱な島しょ国出身の学生は、気候変動と人権の問題を国際司法裁判所に持ち込むように働きかけるキャンペーンを始めた。これが国際社会を動かす原動力となった。
その結果、国連総会は2023年3月、PISFCCの訴えを受けて「気候変動に関する各国の法的義務」についての勧告的意見をICJに諮問する決議を全会一致で採択した。提案を主導したバヌアツは、他の島しょ国と連携しながら132カ国以上の支持を取り付けた。
ICJは2025年7月23日、正式に勧告的意見を公表。「勧告的意見」とは、国際法の解釈や適用に関する公式見解だ。法的拘束力は持たないものの、国際社会に対する道義的・政治的な影響力は大きいとされる。
PISFCCは声明の中で、「2023年のIPCC評価報告書は、地球規模で温室効果ガスの排出削減に向けた抜本的な行動が取られなければ、太平洋諸国は存続できなくなると明確に示している。しかし、私たちはその運命を受け入れない。私たちは希望を持ち続ける道を選ぶ。私たちの国が回復力を示すこと、国際法とその制度が、正義と平和に基づく国際秩序への尊重を体現する世界の灯台であり続けることを願っている」と決意を新たにした。