[書評:大転換 新しいエネルギー経済のかたち]世界で「エネルギー転換」が加速する

今年公開された「世界自然エネルギー白書」最新版によれば、世界におけるCO2排出量が2014年、初めて増加から横ばいに転じた。経済成長と温暖化ガスの増大が連関しないことが証明されたわけだ。環境保護運動家として知られるレスター・R・ブラウン氏による新著『大転換 新しいエネルギー経済のかたち』(枝廣淳子訳、岩波書店刊 税込2052円)は、世界的規模で進む「エネルギー転換」を紹介。気候変動の脅威を背景に、自然エネルギーが積極的に導入されている実情を伝える。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

■化石燃料は「座礁資産」!?

『大転換 新しいエネルギー経済のかたち』(レスター・ブラウン著、岩波書店刊)
『大転換 新しいエネルギー経済のかたち』(レスター・ブラウン著、岩波書店刊)

世界の気温上昇を摂氏2度以内に収めるために、今後許容される化石燃料の消費量は2050年までに1兆4千億トン。しかし13年時点ですでに4千億トンを消費してしまっている。気候変動を食い止めるために、エネルギーの脱化石燃料化は急務だ。

一方で原発は、02年の438基をピークに稼働原子炉数が減少。わけても3・11にともなう東電原発事故は、被害の深刻さを全世界に知らしめた。

こうした情勢のもと、自然エネルギーの導入速度は驚異的だ。世界の太陽光発電の導入量は、08年の1600万キロワットから13年には1億3900万キロワットに急増。他方、米国では500基に上る石炭火力発電所の内、07年から13年までに180か所以上が閉鎖され、石炭消費量は18%減少した。中国の風力発電容量は9100万キロワットで、これは同国内の原発の6倍近い規模だ。

世界的規模で進むエネルギー転換(エネルギーシフト)の中で今後、化石燃料が「座礁資産」となる、と著者は指摘する。座礁資産とは、化石燃料の確保のために投資したにもかかわらず、気候変動対策の制約から採掘できず、将来回収不可能が見込まれる資産のことだ。

つまり今日のエネルギー転換は、原子力、および座礁資産化が必至な化石燃料から自然エネルギーへと、主要な投資先が変わりつつある潮目でもある。ところが日本では、ベースロード電源で石炭火力を重視し、2020年前後までに48基を建設する計画が進んでいる。

■億万長者も自然エネルギーに注目

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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