記事のポイント
- 脱炭素時代、実は日本の石油会社も生き残りを賭けて取り組んでいる
- 石油会社はこれまで、石油に頼った一本足打法を続けてきた
- この記事では、そんな石油会社の脱石油「7つの戦略」を紹介する
石油会社の仕事は油田から原油をくみ出し、搬送し、製油所で精製して様々な石油製品に加工し、これを販売することである。ところが近年、SAFをはじめ、日本の石油会社は石油会社でありながら脱石油への道をたどり始めている。なぜ自らの基盤を揺るがしかねない変革に挑むのか。(オルタナ客員論説委員・財部明郎)
石油会社の仕事は油田から原油をくみ出し、搬送し、製油所で精製して様々な石油製品に加工し、これを販売することである。原油というただ一種類の原料から、様々な製品を作り出すという点に石油産業の特徴がある。
作り出される石油製品としてはガソリンやジェット燃料、軽油のような燃料はもちろんだが、そのほかにナフサやBTXのような石油化学原料や、さらには潤滑油やアスファルトまでと幅広い。
ところが近年、石油会社は原料を石油に頼らない事業に乗りだそうとしている。例えばSAF(持続可能航空燃料)、e-fuel(合成燃料)、E10ガソリン、リニューアブルディーゼルといった燃料やバイオプラスチックのような化学品、発電事業、リチウムイオンバッテリーといったもので、いずれも原料として石油は使われない。
つまり日本の石油会社は石油会社でありながら脱石油への道をたどり始めている。なぜそうするのか。我が国は2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目標として掲げている。
これを達成するためには、基本的に石油のような化石燃料は使用することができないということになる。ということは、実はカーボンニュートラル政策は石油産業にとって死活問題なのである。
石油会社の石油離れは、将来のカーボンニュートラル社会にでも生き残るための挑戦ということができる。いまのところ石油会社の危機感が乏しいようにも思えるが、もし脱石油に失敗し、このまま石油を中心とする事業を継続するならば、その石油会社はやがて消え去ってしまうことになるだろう。
この記事では日本の石油会社が進めている脱石油への試みについて、単なる構想段階ではなく、実際に販売が開始されている、あるいは生産設備の構築が行われているなど、実用化が近いと考えられるものを紹介したい。
(この続きは)
■各社こぞってSAFの製造に乗り出した
■e-fuelの問題点に大量の電力消費も
■30年に「E10ガソリン」の本格販売へ