ついに誕生!国際フェアトレードタウン名古屋![三輪 昭子]

名古屋市では2009年よりフェアトレードタウンを目指した市民の草の根運動が始まった。その運動を継続させ、結実させた名古屋のフェアトレードタウンは、そのテーマとして「地球とのフェアトレード ~地域と世界を、そして今と未来をつなぐ~」とした。

そのテーマの底にある想いには、私たちの暮らしが自然の浄化作用を超えた廃棄物を流し、山や森、海や川、自然を壊しているのではないかという危惧からだ。地球からいただいている自然の恵みである、水・空気・土・光などに対しも、謙虚に正しく享受し、未来に美しい地球を残せるようなフェアな使い方で暮らしているのかを問いかけようとするためである。

名古屋市がフェアトレードタウンの認定を受け、調印式を済ませた日の夜、その誕生を祝う会が名古屋キャッスルホテルで催された。これまでフェアトレードタウン運動には直接には関わらなかった筆者だったが、その認定はとても嬉しかったので、祝賀会だけでも参加し喜びを分かち合おうと出かけた。

祝賀会では、その運動の中心となっていて、今後もタウンとしての大きな力として動いていくであろうフェアトレード名古屋ネットワークの代表、原田さとみさんを中心に構成されたステージの上で、各界の方々からのコメントやお祝いのコメントなどを引き出す重要な役割を担っておられた。

原田さとみさんと言えば、名古屋テレビ塔でエシカル・ファッションやフェアトレードのセレクトショップ「エシカル・ペネロープ」を手がけ、名古屋のフェアトレードタウン化を推進している中心人物でもあるし、中京圏で活躍するローカルタレントとしの知名度ある存在である。

店名にもあるように、「エシカル」という言葉に想い入れが強くあるのではないかという考えもあり、ステージでの彼女の出番が一区切りしたところで、個人的にご挨拶をする時間を取ることができた。彼女のことを私は知っていても、私たちは初対面で、もちろん彼女は私のことを知らない。私自身の自己紹介をし、現在、私が関わる学会の研究プロジェクトでフェアトレードの教材開発をしていることを告げ、「エシカル」というものの私の考えを伝えた。

昨年2014年、雑誌オルタナの企画である「英国エシカル企業視察」に参加経験のある私が私なりの「エシカル」に一応の概念を与えようと努力してきたプロセスの中で、特に私がフェアトレードに着目していたのは、人としての権利が、その仕組みを通じて護られるのではないかという期待である。持続可能性という点に着目してフェアトレードに賛同する立場の人は多いが、大切なのは「人として」という部分なのだ。

話の中で、原田さんは「エシカル」の言葉を耳にすると表情が柔らかくなり、嬉しそうにした。そして、私の名刺を見て、私の勤務する大学の所在地、豊田市も直にフェアトレードタウンになると思いますよと、締めくくった。

帰宅して、原田さん関係の資料を検索したら、エシカルとフェアトレードのことについてを中心テーマにし、彼女の考える「エシカル」について語る対談があった。そこで彼女はエシカルを「思いやり」と語っていた。

対談には、原田さんから素敵なエピソードが紹介されていた。私自身も印象に残ったので、ここに紹介しよう。原田さんがエシカルを、思いやりと表現する姿勢にもつながるエピソードである。

アフリカに赴任していJICAの青年海外協力隊員さんが、普段から家のカーテンを閉めていたり、家の鍵をかけていたりしたら、近所の人から「どうして鍵をかけるんだ」「なんでカーテン閉めるんだ」って怒られたらしい。どうして怒るのか聞いたら、「あなたが家の中で倒れていたり、病気で困っていたりしたら、わからないでしょう。見えるように開けておきなさい!すぐ助けられるように!」って。

通常、家の中のことを外には見せない。恥ずかしいから隠す。そんな常識の下で生活している私たち。思いやりと言えば、相手の立場になって考え、行動するとはいっても自分以外の他人に無関心な人は多い。プライバシーに介入しない。それは個として大切だ。

などと、他人との境界線を明確にする日々の中で、他者を思いやるという気持ちは同じでも、それをどう表現して実行するのか。思いは同じでも、それを表出するスタイルは違う。そういうことは、意外と多いように思う。

地元、名古屋がフェアトレードタウンになることで、そういったエシカルを個々人それぞれが見つけ出していくことになるだろう。それが、まちづくりの原動力となって、さらに人々とのコミュニケーションや関わりなどが素敵に変わっていくことを、筆者は期待したい。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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