記事のポイント
- 6月にもかかわらず、英仏独など欧州各国を記録的な熱波が襲っている
- 2.科学者らはこの猛暑は人為的な気候変動がなければあり得なかったと分析する
- 3.欧州でエアコン普及率が低いことも、健康被害をさらに悪化させている
6月にもかかわらず、記録的な熱波がイギリス、フランス、ドイツなど欧州各国を襲っている。世界の科学者らで構成するワールド・ウェザー・アトリビューション(WWA)は25日、6月下旬の西ヨーロッパでの記録的な猛暑は、50年前に発生していたとしたら、今より3.5℃低かったとの分析結果を示した。欧州各国はエアコンの普及率が低く、そのことも多くの人の健康に悪影響を及ぼしている。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

(c) Copernicus Sentinel data (2026), processed by ESA
「化石燃料によるCO2排出が続いていることが、今週、欧州で、人々が経験している混乱の直接的な原因だ」と、WWAの科学者らは日本時間の6月25日、オンライン記者会見で強調した。
WWAは、熱波などの異常気象が、気候変動によってどの程度引き起こされたのかを迅速に分析・定量評価する国際的な気候科学者の研究チームだ。フランスをはじめとする西ヨーロッパを襲った熱波を受け、WWAの気候科学者らは、「気候変動がなければあり得なかった」と強調した。
国連によると、こうした気候変動の要因に最も大きな影響を与えているのが化石燃料(石炭、石油、天然ガス)の燃焼だ。化石燃料は世界の温室効果ガス排出量の約68%、CO2排出量のほぼ90%を占める。
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のサイモン・スティール事務局長は、WWAの報告を受け、「それでも解決策は明確だ。化石燃料よりもはるかに安価になったクリーンエネルギーへの移行を加速させること、そして森林を保護し、気候変動への耐性を高めることだ」とコメントした。
今回の熱波では、夜間の気温が下がらないことも人々を危険にさらしている。WWAは、前回深刻な熱波が欧州を襲った2003年当時に比べ、今回のような夜間の気温は約100倍発生しやすくなったと指摘する。
WWAはまた、欧州30カ国で分析対象とした854都市のうち、45%が6月下旬にWGBT(湿球黒球温度、日本では「暑さ指数」として知られる)が、過去最高記録を更新したか、あるいは更新すると予想した。

(資料提供)World Weather Attribution
■ヒートドームの猛威が西ヨーロッパを襲う
英国では6月25日にはイングランド南西部のサマセットで気温が36.7℃に達するなど、先週は、同国の6月の最高気温記録を2度も更新した。ロンドンの地下鉄車内の気温は40℃前後に達し、列車や病院など公共サービスが軒並み麻痺した。
英ポーツマスの病院では冷却装置の故障により「緊急事態宣言」を発出し、「ロンドン救急サービスは、生命に関わる緊急事態の対応件数が過去最多を記録した」と英タイムズ紙は報じた。
フランスも深刻だ。仏メディアによると、24日にはフランス南西部のピソスで気温が44.3℃に達するなど、フランスでは2日連続で史上最も暑い日を記録し、猛暑に伴う溺死者が少なくとも48人に達するなど、救急搬送が急増した。また数十万の家畜のへい死も確認された。
ドイツでも、6月の観測史上最長の熱波となり、数兆円規模の経済損失が懸念されているほか、スペインでも6月としては過去最高となる平均気温を記録した。
スイスでも25日には6月の過去最高気温を記録し、4カ所で気温が37℃に達し、スイスの氷河が驚くべき速さで溶けつつあると、スイスの氷河観測機関(GLAMOS)が報告している。
■欧州のエアコン普及率はわずか20%
WWAの記者会見の中で、赤十字・赤新月気候センターのカロリナ・ペレイラ・マルガダン氏は、「欧州では約75%の人が都市部に居住しており、都市でのヒートアイランド現象が熱を閉じ込めている」と説明した。
「多くの住宅やインフラは、寒さ対策を前提に設計されており、エアコン普及率は欧州全体で約20%、英国に至ってはわずか5%程度に留まっている。大部分の住宅にエアコンが設置されている日本や米国とは、暑さへの対応状況が大きく異なる」(マルガダン氏)
■猛暑が社会的格差を浮き彫りに
さらに深刻なのは、猛暑が社会的な格差を浮き彫りにし、弱い立場にある人々を直撃している点だ。
英国内の新たな分析では、ロンドンの100万戸の住宅、1300以上の学校、350の介護施設が危険な暑さにさらされた。英ガーディアン紙は、イングランドでは6人に1人の赤ちゃんが、暑すぎる劣悪な住宅環境で暮らしていると報じる。学校ではうだるような暑さに対策が追いつかず、休校が相次ぎ、子どもたちの間に教育格差も生じているという。
ロンドン市のサディク・カーン市長は、教室や職場に最高温度を設定すべきだと主張し、バスの運転手に対しても、車内が暑すぎれば仕事を止めるよう指示するなど、労働環境にも猛暑の影響が及ぶ。
マルガダン氏は会見で、「年齢が上がるほど暑さへの対処能力が低下する。欧州では5人に1人が65歳以上の高齢者だが、妊婦や子ども、屋外労働者、ホームレスも、暑さには脆弱だ。室内の暑さは見えにくいが、致命的な脅威であり、これは公平性(格差)の問題だ」と力を込めた。
英インペリアル・カレッジ・ロンドンのフレデリック・オットー教授は会見で、「今回の熱波は、気候変動がいかに不公正であるかを示す事例だ。今後の気候訴訟において正義を実現するための強力な法的証拠になり得る」と話した。
記者会見では、参加した欧州議会議員から「できるだけ多くの命を救うために、国や地域が優先すべき適応策は何か」という質問も出た。
■スペインは世界最大級の気候シェルターを整備した
■パリは2020年以降10万本以上の植樹で日陰を作る
■東欧でも40℃超に、鉄道も速度制限を呼びかけ

