■工場の労働環境も改善
テイラー氏は自らの決断により、「真っ黒な指板の方が見栄えがいいから」という理由だけで、10本の黒檀を無駄に切り倒して世界の黒檀の森を危機に陥れる、という長年の悪しき慣習を断ち切りました。
彼の加工工場は世界中のメーカーを相手にしています。取引先がB級の黒檀を拒否する場合もあるでしょう。しかし、まだらの黒檀は、地球に残された唯一の黒檀であり、それが森の真実。そしてテイラー・ギターズはその真実と一緒に生きるという決断をしたのだ、とテイラー氏は言います。

米国国務省は、海外において「よきコーポレート・シチズン」としての活動を行った米国企業に送る「コーポレート・エクセレンス」という賞を設けており、テイラー・ギターズは、一連のカメルーンでの活動により、2013年度の同賞を受賞しました。ケリー国務長官は、ボブ・テイラー氏の受賞をこのように評しています。
「資源が手に入りづらくなって争奪戦が激しくなると、資源を根こそぎにするとわかっていても、あらゆる手を尽くして人よりも安く手に入れようとしてしまうのは、人間の性のようなものである。しかし、ボブはその争奪戦に加わることをよしとせず、戦い方そのものを変えようとした。そして違法伐採を排除し、黒檀の売買の慣習を変える道を選んだ」
「さらに、10本切って1本しか使わないという、持続『不』可能の代名詞のようだった黒檀の商慣習をも変えた。現在テイラー・ギターズは、ボブが言うところの、『森が恵んでぐれる黒檀』を、何色であろうと使っている。もちろん彼は他のメーカーにも働きかけて、音楽業界がこれから先何十年も黒檀を使いつづけることができるように、業界の『使える黒檀』の定義を変えようとしている。もちろん、工場で働く人たちの環境も格段に改善させた」
こだわりのギターメーカーの創立者は、ギターを愛するのと同じこだわりでギターの材料を愛し、材料を育む環境を愛することによって、楽器業界の慣習を変えようとしています。そしてそういったこだわりは、ギターの品質やブランドイメージに昇華されて、ファンの心をがっちりとつかんでいるようです。