今回の米大統領選でのトランプ氏当選を受け、欧州など海外の主要メディアは、各国での大きな驚きと落胆を伝えた。トランプ氏の性格上の問題だけでなく、米国社会が二分されたことについて自国への波及を懸念する声が目立った。海外の日本人記者に緊急寄稿をしてもらった。

■フランス:仏でも極右大統領の当選を懸念
フランスでは2017年4-5月、仏大統領選挙が実施される予定だ。仏二大日刊紙の「ルモンド」と「フィガロ」は、トランプ氏の勝利が自国の大統領選に波及することを警戒する記事を掲載した。
米国メディアの大半は支持しなかったが、国民が支持したトランプ氏に、極右政党の「国民戦線」はマリーヌ・ルペン党首を重ね合わせ、大統領選に勝てる希望を見出した、と「ルモンド」は報じた。
同紙は、大統領選に出馬を表明したニコラ・サルコジ元大統領を「小トランプ」と評し、彼もトランプ氏の勝利に自分を重ねて見ているという。サルコジ氏の「共和党」では数人が予選に立候補している。
左派は、トランプ効果でフランスに極右大統領が出現することを危惧する。「フィガロ」は、社会党が、国民の怒りに答えるよう左派は結集せよと呼びかけたと報じた。さらに、左翼のジャン=リュック・メランション「左翼党」党首が「庶民の不満がわからない、金持ちクリントンのような候補を左派から排除しないと、フランスにもトランプが出現する」と警告したと報道した。(パリ=羽生 のり子)
■ドイツ:閣僚もトランプ勝利に動揺隠さず
ドイツの世論調査では、ドイツ国民の80%以上がクリントン候補に期待していた。ドイツ政府の閣僚たちもトランプの勝利にショックを隠しきれなかった(公共第一放送ARDのサイト)。
ARDでは、シュタインマイヤー外相が「まだ彼がどんな外交政策を予定しているのか知らされていない」と述べ、政府にとってトランプ新大統領はまだブラックボックスだと報じた。シュピーゲル誌のオンライン版は「一つの世界が私たちの目の前で崩壊した」という見出しを付けた。
フランクフルター・アルゲマイネ紙のワシントン特派員は「気まぐれでいつ何をするか予測がつかない大統領」と表現した。
同紙は「トランプは気まぐれで何をするかわからないといくら警告しても、ポピュリズムの反乱(蜂起)に勝てなかった。だから大勢が恐れていたことが起き、彼が選ばれてしまった」と嘆いた。(ドイツ=川崎 陽子)