なぜ国際支援が地方創生につながるのか
大野市が支援を始めた背景に、人口減少問題がある。同市の場合、県外への流出よりも県内への流出人口が多い。希望する仕事が少ないこと、道路が整備されていないことが要因だ。現在、道路の整備は進められており、約30キロ離れた福井市への移動の問題も解消されている。
そこで、大野市は2015年から市のアイデンティティである「水」をつかったブランディングの一環で「水への恩返しCarrying Water Project(キャリングウォータープロジェクト)」を進めている。
同市は、国内でも有数の水対策を行い、良質な水を守ってきた自治体だ。水を通した国際支援を行うことで、大野の水が世界に誇れることに気付いてもらい、ふるさとに自信と誇りを持ってほしいという思いが今回の支援に込められている。
国際支援を含めた同プロジェクトの事業費は、募金やふるさと納税で確保する。募金箱は市内の商店など220カ所に置かれており、越前大野名水マラソンなどのイベントでも支援金を集めていく。事業開始から一年半で、1000万円を超える支援金が集まった。
視察報告会の参加者の一人、管工業を営む山岸謙さんは、水が漏れている水道管の写真を見て、「修理技術を教えることでも交流していきたい」と話した。
東ティモールのコーヒーで地元に恩返し
こうした市の取り組みを支える人たちがいる。市内でコーヒー店「モモンガコーヒー」を営む牧野俊博さんは2016年2月、同じく自営業の山岸謙さんと伊藤修二さんとともに団体「CROP(クロップ)」を立ち上げた。東ティモールのコーヒーを販売し、利益の一部をキャリングウォータープロジェクトに寄付する活動をしている。

クロップを始めたきっかけについて、「地元愛です。僕らなりの恩返しを大野にしたい。市が東ティモールを応援するなら、その市を応援しようと思った」と牧野さんは話す。
東ティモールは、全世帯の25%がコーヒー豆農家だ。コーヒーを通した支援は、経済面だけでなく同国の文化を伝える役割も担う。クロップのコーヒー豆は、牧野さんの店のほかにも市内の喫茶店で使われ、イベントでも販売されている。
大野の地下水を使ったコーヒーは、透き通った味がする。「コーヒーには、豆だけじゃなく水の美味しさも大切です。大野の水で淹れるコーヒーはやはり違います」と笑顔で牧野さんは話してくれた。
天空の城 越前大野城でも有名な大野市
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Carrying Water Project