「企業は誰のものか」という命題の終わり

「そもそも企業は誰のためのものか?最近では企業の所有者である株主の利益だけでなく、従業員や仕入れ業者、地域など企業にかかるすべてのステークホルダーの利益を最大化すべきという考え方があり、このマルチステークホルダーから見た有効なコーポレート・ガバナンスの模索は続いている。そういった議論の中では、経営陣や一部投資家の短期的な利益志向が、他のステークホルダーにとって望ましい長期的な企業の利益やサステナビリティを損なっているという指摘もある」

「もはや各国単位で最大算出を考えるのではなく、世界経済を一つの経済単位とみて、効率的な生産により地球の定員を増やすことが必要である。この人類の目標を理解しない企業は、適者生存の法則から言って最終的にはアウトパフォームしないであろう」

マルチステークホルダーの観点や地球規模の視野を組み込まないコーポレート・ガバナンスシステムでは、長期的な時流の変化に対応できないことを示唆した興味深いものです。

ベンチャーキャピタリストとして名高い原丈二氏は10年前に出版した『21世紀の国富論』で既に、アメリカ型のROE重視経営では、長期的な資本が担保されず、うわべだけのIRで株価を上げる風潮になると警鐘が鳴らされています。

アメリカ型のコーポレート・ガバナンスは株主重視でROE偏重となったがゆえに、資本が増える製造業などの海外生産を推進することで、産業の空洞化が起こったと指摘、「カネをいくら膨らませたかによって価値を比較するスタイルの資本主義は(中略)破綻に向かって突っ走っている」と述べ、企業は表面的な企業価値に踊らされず社会的な役割を果たすべきであり、投資家の視野にも長期性と社会性を強く求めています。

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中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

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キーワード: #CSR#ESG

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