サステナビリティとCSR/CSVの関係性を考える

3)CSR=「社会貢献」ではありません。
「社会貢献」(英語でフィランソロピー)とは、寄付やボランティア、プロボノ、財団を通じた活動、教育活動、メセナ活動などを指します。いま日本企業のCSR活動として最も多いパターンです。しかし、社会貢献もあくまでCSRの一部にすぎません。これからは、社会貢献の重要性は認めつつ、それに加えて、「本業を通じたCSR活動」「価値創造するCSR活動」「CSV」の比重を高めることが求められています。

4)「CSRに取り組んでもメリットは少ない」は誤解です。
企業にとって、CSRは義務ではありません。しかし、それに取り組めば、必ず企業は強く(レジリエントに)なります。CSRに取り組めば、ES(従業員満足度)、CS(顧客満足度)、SS(社会満足度)のそれぞれを高め、未来の顧客を創造します。CSRは「21世紀最強の経営ツール」といっても過言ではありません。さらに、上場企業にとっては「ESG(環境・社会・ガバナンス)の情報発信」は、株価に直結しかねない、非常に重要な課題です。最近では、「CSR/サステナビリティ」と「本業/利益」の両立を目指す経営者が日本でも増えています。

5)SDGs「アウトサイド・イン」は、新しいビジネスアプローチです。
SDGs(持続可能な開発目標)のビジネス指南書「SDGsコンパス」で規定された「アウトサイド・イン」は、これまでの「プロダクト・アウト」や「マーケット・イン」を補完するものです。従来の「顧客ニーズ」への対応だけでなく、社会ニーズにも対応していくアプローチを指します。そして、社会的課題の解決というプロセスを通じて、イノベーションを起こせば、新規市場を獲得することもできるという考え方です。「アウトサイド・イン」はCSVの考え方と非常によく似ています。

6)SDGsや、ISO26000は「ソフト・ロー」の一種です。
ソフト・ローとは、法的な拘束力を持たない(対応しなくても法的な制裁を受けない)社会規範を指します。SDGs(持続可能な開発目標)も、ISO26000(社会的責任の国際基準)も、取り組まなくても企業が法的な制裁を受けることは無く、あくまで自主的な対応が求められています。しかし、これらに取り組むと、サステナビリティやCSRの観点から、経営の品質が高まり、通常では見えない事業リスクが見えてきたり、それを予防・軽減できたりします。これらは「攻めのCSR」の領域にも活用できます。

森 摂(オルタナ編集長)

森 摂(オルタナ編集長)

株式会社オルタナ代表取締役社長・「オルタナ」編集長 武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授。大阪星光学院高校、東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。編集局流通経済部などを経て 1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。環境省「グッドライフアワード」実行委員、環境省「地域循環共生圏づくりプラットフォーム有識者会議」委員、一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事、日本自動車会議「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」選考委員ほか。

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