サステナビリティ経営の質を見極める

■バウンダリ(開示範囲)
報告の質を見極めるのに重要なのは、その企業がどの範囲を責任範囲ととらえているかです。

グローバルに展開しているにも関わらず、国内だけ、しかも本社だけの開示をしているのでは、開示・問題意識が不十分と言われても仕方ありません。今や、大手アパレルメーカーなどはすべての取引先まで開示しているくらいです。

開示されている情報がどの範囲かは上記の「編集方針」や、グラフ・表ごとの注記に書かれていることが基本ですが、仮にそれすら書かれていない報告があるとすれば、信頼性に疑問が生じます。傾向としては、環境関連の情報は比較的海外の情報も開示される傾向がありますが、社会関連の情報は開示が遅れているようです。

■CSRマネジメント
情報がただ開示されていることは重要な一歩ではありますが、それだけでは十分ではありません。

CSRマネジメントとして、そうした開示が改善プロセスの上で機能しているかが重要です。企業の目指す姿が何なのかを頂点に、ステークホルダーは誰か、重要な課題(マテリアリティ)は何かがしっかりと定められ、その実現に向けて目標を立て行動し、実績と課題を明記しているかどうか、企業のサステナビリティ報告(活動)はこの部分に尽きるのではないかと考えています。

現在行われている企業活動や体制・PDCAとの整合性を取りながら、一番効率的な形で進める経営センス・リスクへの感受性が求められます。それは経済活動・お客様が重要視され過ぎていたそれまでのルールと異なるため、対応していくのは当初は至難の業かもしれませんが、長期的な目で見れば、恐らく生き残っていく条件となるでしょう。

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中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

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