「企業の目的は利益ではない」は「きれいごと」か

おそらく、いま日本のビジネスパーソンの大半は同じような気持ちを持っていることだろう。確かに、どの会社にも売上高や利益の必達目標があって、みなそれを達成するために毎日、必死で頑張っている。

平成不況や世界的な低成長時代に入って、企業が売上高や利益を伸ばすのは容易なことではない。人口減少時代に突入した国内産業はもちろん、海外での企業間競争もし烈だ。まず勝ち残らなければ「サステナビリティ」などと言っている余裕もない。

そんな人たちに「利益は会社の目的ではないのですよ」と言ったところで反発を買うだけだろうし、すぐには理解してもらえないだろう。だが、それでも、存在意義(パーパス)は利益より大事だと強調したい。まず、ピーター・ドラッカー『マネジメント』から引用する。

 企業とは何かと聞けば、ほとんどの人が営利組織と答える。経済学者もそう答える。だがこの答えは、まちがっているだけではなく的はずれである。経済学は利益を云々するが、目的としての利益とは、「安く買って高く売る」との昔からの言葉を難しく言い直したに過ぎない。(中略)
 利潤動機には意味がない。利潤動機なるものには、利益そのものの意義さえ間違って神話化する危険がある。利益は、個々の企業にとっても、社会にとっても必要である。しかしそれは企業や企業活動にとって、目的ではなく、条件である。
(中略)
 企業とは何かを知るためには、企業の目的から考えなければならない。企業の目的は、それぞれの企業の外にある。企業は社会の機関であり、その目的は社会にある。企業の目的の定義は一つしかない。それは顧客創造である。(いずれも『マネジメント』エッセンシャル版第1章2「企業とは何か」から引用)

ドラッカーのこの著述は分かりにくい。「企業の目的は社会にある」と言いながら、目的の定義は「顧客創造」と続く。すると、「やはりビジネスを伸ばすことが大事でしょう」「そのためには、まず利益を出さなければ」と受け止める読者も多いことだろう。

だが、ドラッカーの当該部分において、私は「顧客は社会の中にいる。社会課題を解決することが顧客創造につながる」と解釈したい。これは、SDGsコンパスにも記述がある「アウトサイドイン」(社会課題の解決を起点にしたビジネス創造)に他ならない。

「利益や売り上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのか」(紺野登+目的工学研究所、ダイヤモンド社刊)なる本もある。この本はなかなか刺激的で、次のような興味深い記述もある。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #パーパス

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