サステナビリティ経営の質を見極める 3

ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGsなど、サステナビリティが注目され、企業の取り組みも進んでいる昨今ですが、本当にその企業が社会・環境にしっかり配慮しているのかを見極めるのは至難の業です。CMがキャッチーだから、いいプロジェクトをしているから、報告書のデザインがいいから、といったことでなんとなく良い印象を持つ、ということも多いでしょう。今回は、10年ほど企業の情報開示を支援させていただいた経験から、サステナビリティ(CSR・社会環境)報告を使って企業の社会性を読み解くポイントについてご紹介します。最終回の今回は統合報告から読み取れる企業のサステナビリティへの本気度についてお伝えできればと思います。(なお、こちらに述べさせていただく意見は、飽くまで私個人の見解となります。また、最近はWEBも含めて開示する方向にあるため、「報告書」ではなく「報告」とさせていただきます)(中畑 陽一)

・統合報告のもたらした問題

統合報告の発行増大に伴い、投資家向けのアニュアルレポートと、広いステークホルダー向けのCSRレポートを1冊にまとめるという形態が増えました。統合報告に求められているのは、価値創造するプロセスを簡潔に表現することです。

価値創造の過程で環境資本や社会関係資本といったCSRレポートで開示されていた資本との結びつきも明らかにすることになるため、その結びつきを示すことが求められます。

その結びつきを示すことがない、単純にアニュアルレポートの情報とCSRレポートの情報を合わせた「合冊型」が初期には多く見られましたが、最近は随分減り、価値創造プロセスを中心に必要な資本の情報を簡潔にまとめたものが増えてきたような印象があります。

しかし、CSRレポートを廃止してしまう、あるいは情報開示量を減らすケースがあり、これは大きな問題です。

・CSRは死なない

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中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

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