緊急連載■バイオマス発電の限界と可能性(上)

■提訴理由は「次世代のために自然を守ること」

放射能に汚染された木材を燃やすことで、地域が汚染され、次世代に残すべき豊かな自然が汚されるということが、今回提訴した住民団体「赤城山の自然と環境を守る会」(会長:横川忠重)の一番懸念していることだ。同会は、この訴訟をこれから生まれてくる子どもたちへの責任の問題だと捉えている。

放射能で汚染された木材を燃やすことで、飛灰は100倍程度に濃縮される(ちくりん舎資料、(注2))。飛灰はバグフィルターで100%捕捉できるわけではなく、粒径の大きなもので80%程度、粒径の小さなものでは20%〜40%程度しか取れないとのことである。住民らの心配は根拠のないものではない。

赤城山は百名山の1つにも数えられる名峰で、その赤城山をご神体とする赤木神社は古くから人々の信仰を集めている。見事な桜のトンネルと菜の花が楽しめる赤城南面千本桜は県内で最も人気の高いお花見スポットだ。

この美しい自然に惹かれ、赤城山南麓に移住してくる人も多い。環境にやさしいはずのバイオマス発電が、こうした環境を脅かす存在になってよいはずがない。

4億8000万円の補助金を不正支出であるとして、県を提訴した住民らは、危機感を募らせている。その訴訟が2019年7月17日、前橋地方裁判所で足かけ4年に渡り発電所に翻弄された住民が傍聴するなか結審し、裁判長が判決日を読み上げた。判決は2019年10月31日午後2時だ。住民らの訴えは、認められるだろうか。

■環境団体がバイオマスで共同宣言

環境にやさしい暮らしを考える

栗岡 理子(編集委員)

1980年代からごみ問題に関心をもち、活動しています。子育て一段落後、持続可能な暮らしを研究するため、大学院修士課程に進学。2018年3月博士課程修了(経済学)。専門は環境経済学です。執筆記事一覧

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キーワード: #バイオマス発電

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